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去りゆく2人の名将。
古き良き野球との惜別。
~MLBを支えた昔気質の人情派~ 

text by

四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

PROFILE

photograph byYukihito Taguchi

posted2013/11/25 06:00

去りゆく2人の名将。古き良き野球との惜別。~MLBを支えた昔気質の人情派~<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

タイガース黄金時代を築いたリーランド(右)。ジョンソンは、WBC米国代表監督も務めた。

 今オフも、また米球界の名物監督がユニホームを脱ぐことになった。タイガースを率いてきたジム・リーランド監督が、今季限りで勇退することを発表した。'03年にア・リーグワースト記録の年間119敗を喫するなど、長年の低迷から一転、就任直後の'06年にワールドシリーズ出場を果たしたのをはじめ、今季まで地区3連覇を遂げるなど、世界一にもっとも近い強豪のひとつとして復活した。だが、'63年にプロ入りして以来50年目。体力的にも限界に近かった。

「もうすぐ69歳になるが、恥ずかしいことではなく、誇らしく思うよ。ガソリンがかなり減ってきているんだ」

 現役選手としてメジャー経験はないものの、リーランド監督の手腕に疑問の余地はない。'86年、41歳の若さでパイレーツの監督に就任して地区3連覇に導いて以来、'97年マーリンズでの世界一など、常に低迷チームを再建してきた。プレーする立場ではないものの、球場入りすると真っ先にスパイクを履き、グラウンドではノックバットを振る。常に鋭い眼光で選手の動きを観察し、甘えを許さない、厳しい指導方法で知られてきた。

自分の眼力を信じ続けた、リーランドとジョンソン。

 その一方で、近年流行のセイバーメトリクスなどのデータ重視野球とは一線を画し、独自の眼力と経験をもとに采配を進めた。しかも、選手にマイナスになることは一切口にしない。リーグ優勝決定シリーズ第2戦で逆転負けを喫した際には、「あれは自分の継投ミスだった」と、すべての敗因を背負った。そんな昔気質の野球人だけに、引き際も潔かった。9月中には、球団首脳に勇退の意志を伝えた。プレーオフの結果にかかわらず、身を引くことを決断していた。

 ナショナルズのデービー・ジョンソン監督も、公式戦終了後に勇退を発表した。かつて巨人でもプレーし、'86年には「ミラクル・メッツ」を率いて世界一に輝いた熱血漢も、今年70歳。

「家に戻る時が来た。オレのことを放牧してくれないか」

 2人は、長い間、米球界を支えてきた「オールド・スクール」を踏襲する代表的存在だった。数字やデータ偏重ではなく、基本プレーを重要視し、時には感情をむき出しにして戦う人情派。古き良き時代の匂いがする老将との別れを惜しむ声は、後を絶たない。

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