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石川遼が“プロデューサー”に?
世界基準の難易度とホスピタリティを。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byKYODO

posted2013/11/21 10:30

石川遼が“プロデューサー”に?世界基準の難易度とホスピタリティを。<Number Web> photograph by KYODO

米ツアーシード権も危ぶまれたが、2年目を迎え、復調の兆しが見える石川。三井住友VISA太平洋マスターズでは、首位に1打差と迫り、おしくも優勝は逃したが、集まったギャラリーを沸かせた。

ローピングに水、石川プロデューサーの異例の取組とは。

 チャレンジトーナメントは通常、コースに選手とギャラリーを仕切るロープが無い。試合前の練習を行なうドライビングレンジでは、ゴルフ場の一般営業時と同じ、キズだらけの練習ボールを使わなくてはいけない大会もある。「ハングリー精神を呼び覚ます過酷な環境」と言えば聞こえはいいが、そこにプロが戦うべき雰囲気があるのかという疑問も浮かぶ。

 石川の大会は、チャレンジでは異例とも言えるコース内のローピングを施し、複数のメーカーに練習用ボールの協賛を取り付けた。

 そして“プロデューサー”が「こだわりましたね」と胸を張ったのが、水だった。

 1ラウンド4~5時間をかけてラウンドするゴルフは、水分補給が欠かせないスポーツだ。ペットボトルをキャディバッグに入れ、中身が無くなれば、各ホールのティグラウンドにあるクーラーボックス(通称“どぶづけ”)から新しいボトルを補充していく。しかしチャレンジトーナメントでは、予算の都合上、選手たちに無償提供されるドリンクが制限されている場合が多い。「2本までは無料、3本目以降は有料」というルールが一般的だ。

段ボールにビニール、ガムテープで作ったオアシス。

 石川にしてみれば、この“どぶづけ”の少なさは、日本のレギュラーツアーにも見受けられるという。「アメリカだと、ほとんどすべてのティグラウンドに水があって、1ホールの中でボトルを『取って、飲んで、捨てて』という流れがある。でも、日本だと『この水を大切に飲もう』とか『ゆっくり飲まないとな』なんて考える試合もあるんですよ」

 当初2ホールだけに置く予定だったどぶづけを、石川は全18ホールに置くよう指示した。

 プロデューサーのそんな指令を受けたスタッフたちは大慌て。クーラーボックスを開幕直前に16個追加して用意する時間はないし、なにせ予算オーバーだ。だから石川の事務所関係者は近所のホームセンターで段ボール箱とビニール、防水ガムテープを購入し、急きょ手作りでこしらえた。氷が解け、冷たいドリンクがぬるくならないように、取っ手のついた開閉式のふたも装着した。

 石川も「本当に多くの人の協力でやれた」とスタッフが奔走したのを知っている。だが、全ホールに“オアシス”を作るのは、選手をプレーに集中させ、最高のパフォーマンスを引き出すための最低限のホスピタリティだと考えたのだ。

【次ページ】 セッティングとホスピタリティを世界レベルに。

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石川遼
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