SCORE CARDBACK NUMBER

両膝靱帯損傷から1年。
岩渕香里、完全復活へ――。
~高梨沙羅の活躍を刺激に~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byShino Seki

posted2013/11/03 08:00

「1位になったがジャンプはK点に届かず納得いくものではない」と悔しさもにじませた。

「1位になったがジャンプはK点に届かず納得いくものではない」と悔しさもにじませた。

 祝福されると笑顔で応えた。本格的な復活を示すジャンプに、喜びが全身から伝わってくるようだった。

 10月20日、ノルディックスキー・サマージャンプの記録会が白馬ジャンプ競技場のラージヒルで行なわれた。女子の部で優勝したのは、1本目に98.5m、2本目に108.5mを記録した松本大学2年生の岩渕香里だった。

 昨年3月、蔵王でのワールドカップで自己最高の7位に入り注目を集めた岩渕が飛躍を遂げたのは、昨夏のことだった。8月の国際大会で、10位と5位の好成績をあげるばかりか、国内の大会では2度にわたって高梨沙羅らを抑えて優勝を飾り、期待を集める一人になった。

 暗転したのはその直後の9月のことだ。遠征先のイタリアで、着地した際に左右両膝の前十字靱帯を断裂する。靱帯損傷は競技生活に大きく響く怪我だが、それを両膝に負ったのである。しかも、右は内側側副靱帯も断裂、左は半月板をも損傷。手術は3度にわたって行なわれ、まったく歩けない状態からリハビリを続けてきた。ようやく飛ぶことができたのは今年の7月になってからのこと。その後、海外遠征メンバーに選ばれるなどの経緯をたどっての優勝であった。

高梨の活躍で感じたうれしさ、悔しさを糧に五輪代表へ。

 とはいえ、膝に何の不安もなくなったわけではない。

「ふだんの生活に影響はなくなりましたが、今でも何本か飛んでいると腫れてきて、痛くなります」

 だから、ジャンプのときはいつも恐怖心があると言う。毎日のケアを欠かすこともできない。

 そんな岩渕を支えるのは、「1位になったからといって、このジャンプじゃ満足できない」という向上心の強さが一つ。一度は互角に渡り合いかけた高梨の活躍もリハビリ中の刺激になった。

「ワールドカップで何勝もしているのを見て、うれしいのと、悔しい気持ちが両方ありました」

 何よりも、ソチ五輪という目標がある。

「復帰して、自分が思ったよりは順調に進んでいると思います。ソチにも絶対に行きたいです」

 五輪代表入りへの道のりは、決してやさしくはない。それでもあきらめずに前を見据える岩渕香里の強い意志の今後を見守りたい。

関連コラム

ページトップ