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福永&エピファネイア、
シナリオ通りの悲願達成。
~人馬一体の菊花賞制覇~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byYuji Takahashi

posted2013/11/02 08:00

福永&エピファネイア、シナリオ通りの悲願達成。~人馬一体の菊花賞制覇~<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

菊花賞挑戦16度目にして初の栄冠。単勝1.6倍の断然1番人気に応えた。福永はGI通算22勝目。

 第74代菊花賞馬の栄誉に輝いたエピファネイア(牡3歳、栗東・角居勝彦厩舎、父シンボリクリスエス、母シーザリオ)が、やけに控えめなウイニングランからスタンド前に戻ってきた。ムチを一発も入れられることなく5馬身差の楽勝劇を演じたとはいえ、不良まで悪化した3000mを力走した馬に余計な仕事はさせられないという福永祐一騎手の配慮がそうさせたに違いない。

 敗退した他馬と同様に2コーナー過ぎまで流してゆっくりと馬を止め、弾けるような笑顔で待ってくれているはずの角居調教師ら厩舎のスタッフがいる場所に向けて淡々ときびすを返す。派手なガッツポーズを作ることもなかったが、悲願を成し遂げた鞍上の心情はファンにも容易に想像がつく。だからこそ、馬場の出口で一瞬だけ動きを止めた福永&エピファネイアに、そのときを待ち構えていたような祝福の声援が大きな渦となって京都競馬場の曇天に轟いたのだ。

 福永騎手はあらかじめそうしようと決めていたかのように、馬上でヘルメットを片手に取って胸に抱え、そのまま深々とお辞儀をした。そのポーズがバッチリと決まり、再びスタンドから降り注ぐ大拍手だ。すべてが彼のシナリオ通りに運んだ菊花賞だったと、このときに確信できた。

キズナとロゴタイプ不在の中で負けるわけにいかない。

「よく我慢したね」が、角居調教師の労いの第一声。トップスタートを切ったために、持って行かれ気味に最初の3コーナーを下ったシーンのことだろう。

「あそこだけ、ヤバかったです」と福永も照れ笑いで返したが、そのあとはハラハラする場面がひとつもなかった。福永自身、「2周目のバックストレッチで勝利を確信していた」と言うのだから、小さなアラを探す必要がない完璧な騎乗。春に後塵を拝したキズナ、ロゴタイプがいないメンバーで負けるわけにはいかないという強い気持ちも、プレッシャーではなく、プラスに働かせることができた。

 JRAであげた1562個目の勝ち星が、牡馬クラシックでの初勝利。福永は「凄い馬と出会い、2度も負けてしまったのに、こうしてまたチャンスをもらえた。怪物のようなパワーをこの手綱で御すことができなくてジョッキーと言えるのかという思いでやってきた」と、経験したことのない充実感を彼らしく語った。

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