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ブンデスで前半戦最大のサプライズ!
弱小マインツを変えた青年監督。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2010/12/22 10:30

ブンデスで前半戦最大のサプライズ!弱小マインツを変えた青年監督。<Number Web> photograph by AFLO

選手時代はDFで、キャリア最高はブンデスリーガ2部。24歳で現役引退しているトゥヘル氏は、引退直後にはバーでアルバイトをしながら大学に通い、指導者の資格を取った

 今季のブンデスリーガ前半戦は、W杯直後のシーズンらしく、大荒れとなった。

 王者バイエルンの不調、大型補強を行なったシャルケのつまずき、エジルを失ったブレーメンの迷走、シュツットガルトの3季連続の監督解任劇など、話題に事欠かない。

 一方、記録的なペースで勝ち点を積み上げるドルトムントと共に驚きをもたらしたのがマインツだ。

 リーグタイ記録となる開幕7連勝を飾るなど、マインツは開幕直後から一手に話題を集めた。その後はペースを落としたものの、リーグ15節終了時まで3位以上の座をキープしていた。トランスファーマルク(サッカー移籍市場を扱うドイツのニュースサイト/Transfermarkt.de)の調べによれば、マインツの選手の総評価額は約60億円。これはブンデスリーガのクラブで下から6番目だ。ホルトビー、フックス、イバンシッツ、リーセなど、レギュラーから準レギュラークラスの選手のうち4人はレンタル移籍中だ。彼らの市場価値を差し引けば、さらにマインツは“貧乏”クラブということになる。“貧乏”クラブだからこそ、彼らの躍進は注目に値するのだ。

選手の潜在能力をいち早く見出すトゥヘル監督の眼力。

 躍進の最大の原動力は、チームを率いるトーマス・トゥヘル監督――現在37歳で、英西独伊仏の欧州5大リーグに所属するチームの中で最も若い監督の一人だ。シュツットガルトのユースチームなどを経て、マインツにたどり着き、昨季開幕直前に監督に就任。トップチームの監督として初めてのシーズンで、当時昇格したばかりだったマインツを9位に導いた。

 シュツットガルト時代には、現在はレアル・マドリーでプレーするケディラを指導した。将来はドイツ代表のキャプテンになることが確実視され、エジルやノイアーなどとともに2009年のU-21欧州選手権で優勝を果たしたチームでキャプテンを務めていたのがケディラなのだが、そのキャプテンシーにいち早く気がついたのはトゥヘルだと言われている。昨季の成績が高く評価され、今季開幕前には2013年6月末までの契約延長をトゥヘルは勝ち取っている。

コンディション重視の柔軟な選手起用で新風を吹き込む。

 トゥヘルの最大の魅力は、選手起用の巧みさにある。

 絶対的なレギュラーを作らず、コンディションを重視してスターティングメンバーを決める。つまり、トゥヘルはコンディションを基準としたローテーション制を導入しているのだ。

 ブンデスリーガの平均観客数は世界一だが、それはファンがリーグ戦を大切なものだと考えているから。そのため、ドイツではローテーションを採用するクラブはほとんど見られない。直後に大切なチャンピオンズリーグなどが控えていても、リーグ戦で手を抜くことは許されないのだ。

 トゥヘルが「新時代の戦術家」と呼ばれるゆえんも、そんなリーグでローテーション制を採用したところにある。例えば、前半戦のリーグベストイレブンの1人として挙げられるホルトビーでさえ、9月21日のケルン戦や12月12日のシャルケ戦などでは、コンディション不良を理由に先発から外されている。

【次ページ】 レギュラー不要戦略は「英国風のサッカー」実現のため。

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