CSでロッテは予想外の善戦を見せていたが……。

　CSファイナルステージの第1戦で、ロッテは田中将大の好投の前に敗れた。しかし、シーズンの惨憺たる成績を思えば、2失点のみの敗北はロッテにとって明るい兆しだった。シーズンをほぼ棒に振っていた成瀬を先発にたてて、接戦に持ち込む。シーズン中の相性の悪さを感じさせない展開は、ロッテに前を向かせるのに十分だった。

　第2戦も同じような展開で進んでいた。先発のグライシンガーがゲームを作って接戦に持ち込む。打線は7回に1点を先制。そこからカルロス・ロサ－益田－内で逃げ切りを図った。

　この快勝ムードを9回1死、ジョーンズが打ち砕いたのだった。

　確かに、同点止まりではある。

　だが、レギュラーシーズン中にロッテが試運転までして作り上げた投手リレーの展開から一矢を報いた本塁打には、勝敗以上に大きな意味があった。

　ロッテの必勝プランが、決して盤石ではないと見せつけることになったからである。その後の戦いは言うまでもない。楽天が連勝し、日本シリーズ進出を決めた。

谷繁が口にした『この1球』の意味とは。

　そういえばCSが始まる前日、NHKが面白い番組を放送していた。

　CSを展望するという趣旨で、NHKの解説でおなじみの梨田昌孝氏、与田剛氏、さらにはゲストとして、侍ジャパンの監督に就任したばかりの小久保裕紀氏、中日の選手兼任監督となる谷繁元信氏を交えてのトーク番組。

　大舞台を知る4人のCS展望は実に興味深いものだった。

　そして、番組の最後に谷繁監督がこんなことを口にした。

「シリーズには『この1球』で変わるという瞬間が存在する。だから、その『1球』を見つけて欲しい」

　短期決戦の戦いには、間、あるいは場の空気が存在するのだと思う。そして、それはたった「1球」でがらっと変わってしまうものだ。

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