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葛飾区が産んだ「昭和の2大スター」
両さんと寅さんに、教わったこと。 

text by

疋田智

疋田智Satoshi Hikita

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photograph bySatoshi Hikita

posted2010/12/18 08:00

葛飾区が産んだ「昭和の2大スター」両さんと寅さんに、教わったこと。<Number Web> photograph by Satoshi Hikita

「こち亀」の両さんが、「よっ」と迎え。

 綾瀬(足立区)から区境を越えると、片仮名の大きな「カ」。葛飾区の力強くも分かりやすーいマークが迎えてくれる。

 東でも西でも東京を区切る環状七号線、通称環七の手前に、JR常磐線および地下鉄千代田線の亀有駅がある。

 まずは駅北口すぐに等身大(?)の両さん像である。改札を出てくる人を「よっ」と迎えている。見ていると、この銅像の写真を撮りに来る人がけっこういる。もうほとんど観光地なのだ。

 秋本治の超ロングラン漫画、いわずと知れた「こちら葛飾区亀有公園前派出所」。通称「こち亀」の主人公が、この銅像の両さんこと両津勘吉だ。

「週刊少年ジャンプ」の連載スタートが1976年。もう35年も驚異的な長期連載を続けている。35年前といえば私が9歳だった頃だよ。連載スタート時のことを憶えている。秋本治氏は「山止たつひこ」を名乗っていた。絵柄はいまよりも黒くてワイルド、両さんだって、もっと粗野なバイオレンス警官だった。

 なんだか歯医者さんの待合室にコミックスが数冊あって、1巻から6巻あたりまでは、本当に繰り返し読んだなぁ。

 で、時を経て、紆余曲折を経て、そのワイルドテイストが、少しずつ変化していった。

「こち亀」は、様々なヒットキャラを手に入れ、少しずつ進化、複雑化し、一話完結なのにもかかわらず迷宮のような魅力を持つに至った。俳句好きの間抜けなヤクザ、御所河原組長や、4年に1度、眠りから覚める日暮熟睡男、変態の海パン刑事など、みな迷宮の魅力を織りなす登場人物だ。

 この数年は、ウンチク路線、オタク路線で、若い世代にも対応している。そうして「こち亀」は世代を問わない支持を得る最強の下町ユーモア漫画になった。

 単行本の総発行部数が1億5000万部以上。つまりあらゆる日本人が一人一冊以上持っているという勘定。驚くべき数字である。

大原部長は、どこへ行った?

 銅像の写真を撮っていたら、横からお婆さんが声をかけてきた。

「お兄ちゃん、向こうには麗子さんがいるよ」

 ありがとう。駅前の通りを越えてすぐだ。漫画のモデルだとされた(作者本人は否定、でも交番の造形は似てる)亀有駅北口交番の目の前にある。

 麗子さん(美人で財閥のお嬢様警察官)はちょっと小さめの銅像だった。こういうのが駅前から亀有一円各所に色々あるわけだ。

 もちろん両さんが一番多い。それ以外は、ここの麗子と、中川(ハンサムな財閥御曹司警察官)、本田(普段は気弱だがオートバイに跨ると恐い白バイ警察官)の三種類。マクドナルド前とか、信金前とかに据えてある。ちなみに大原部長の銅像はない。不思議なことなんだけど。

 亀有にはいたるところに「こち亀・銅像地図」があって、そういう銅像の配置を案内している。

 境港(鳥取県)の「水木しげるロード」もこんな感じなのだろうかね。

【次ページ】 両さん連載30年の歴史が磨いたアピール力。

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