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勝負を決めたのは球場の“気分”!?
CSを巡る西武対ロッテの空気を読む。 

text by

阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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photograph byKYODO

posted2013/10/12 06:01

勝負を決めたのは球場の“気分”!?CSを巡る西武対ロッテの空気を読む。<Number Web> photograph by KYODO

青いジェット風船を放ち盛り上がる西武ファン。西武は1回、2回、4回、6回、8回と得点を重ね、10-2でロッテに大勝し、2位を死守してCSホーム開催を手にした。

 マリーンズのラインアップが発表されるごとに、近くにいた若いライオンズファンが「すげえよ」「打ちそうだよ」「怖えーよ」と大げさに反応した。特にこれまでと変ったメンバーというわけではなく、悪い選手たちではないが鬼神でもない。それを怖がって見せたのは「この試合は大きな試合だ。大事なんだ」という気分を自ら盛り上げるための演出のように思えた。

 そう、気分が大事なのだ。

 大きいとも小さいともとらえることのできる試合だった。シーズン最終戦のライオンズ対マリーンズ戦。勝ったほうが2位になり、クライマックスシリーズファーストステージのホーム開催権を得ることができる。ホームの優位は揺るがないから、ファイナル、そして日本シリーズへの道が(気分の上でだが)広がる。その意味では大きな試合。

「気持ちで戦う」ことの意味するところとは。

 とはいっても2位争いでしかないのも事実。1位チームはさっさと優勝を決めて準備万端怠りない。それを思えば、ここでの2位争いなどは小さい、小さい。

 だから試合もどういう気分で戦うかで様相が変る。大事な試合を分けるのは気持ちだとよくいわれる。「強い気持ちで戦いました」とヒーローは答える。でも、負けたほうのひとりひとりだって気持ちの強さでそう劣っているとは思えない。

 むしろ差があるとしたら、全体に流れる漠然とした気分、空気のようなものだろう。気分や空気の微妙な変化が勝敗を分ける。

 この日の試合は序盤から中盤にかけては両チームに「大きな試合」の気分が満ち溢れていた。それが緊張感を生み、熱戦を期待させた。それが途中から一方のチームに「小さい試合」の気分が生まれた。いや、追い込まれて「小さい試合」にしておこう、してしまおうという気分が流れた。その変化が面白かった。

 具体的に書こう。1回裏にライオンズが2点先制すると、2回表、マリーンズも1点を返す。「大事な試合。負けられない」の気分はこのときイーブン。2回の裏、その配分を変えるプレーが出た。

【次ページ】 「負けられない」気分が退潮した瞬間。

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