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助監督の解雇は「バルサ化」の布石?
王者チェルシー、失速の真相。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byAction Images/AFLO

posted2010/12/10 10:30

助監督の解雇は「バルサ化」の布石?王者チェルシー、失速の真相。<Number Web> photograph by Action Images/AFLO

昨季はクラブを4季ぶりのプレミア優勝に導いたのに、すでに今季限りとも噂される監督のアンチェロッティ。もはや続投にはCL制覇しかない!?

助監督の解雇はオーナーに対する失言が理由か。

 スランプのもう1つの理由は、不穏な空気による動揺だろう。

 チェルシーはフルハム戦の翌日、何の前触れもなく助監督のレイ・ウィルキンスを解雇した。会合の席で、ロマン・アブラモビッチと彼の側近に対する失言があったことがその理由だとされる。

 現役時代にキャプテンを務めたこともあるウィルキンスは、「ミスター・チェルシー」として、イタリア人監督からも国際色豊かな選手たちからも慕われていた。おまけに、1軍の練習とは無関係だったスカウトのマイケル・エメナロが助監督に昇格とくれば、チームの面々は納得がいかないはずだ。エメナロは、3年前、オーナーがチェルシーに呼び寄せたアブラム・グラント(現ウェストハム監督)の人選で職にありついた人物。アンチェロッティは、公の場では「クラブの判断を尊重する」と発言しつつも、プライベートではクラブへの怒りを露にしたと言われる。あるベテラン選手は、「まるで(ジョゼ・モウリーニョ退任後の)グラント就任の悪夢の再現だ」と漏らしている。

バルサ化を進めたいオーナーはグアルディオラ招聘に動く!?

 権限の弱さが浮き彫りにされたアンチェロッティには「今季限り」との説が流れた。ただでさえ戦力ダウンで苦しいチームにとっては、最も避けたい部類の“雑音”だ。噂の後任候補は、バルセロナでの来季以降が不透明とも言われるジョゼップ・グアルディオラ。チェルシーを牛耳るアブラモビッチは、エンターテイメント性の高い攻撃的なスタイルを好む。“パス&ムーブ”の究極とも言うべきチームを作り上げたバルサの指揮官にご執心でも不思議はない。ニューカッスル戦の前夜には、今季限りで退くフットボール・ディレクター、フランク・アルネセンの後任として、クラブがチキ・ベギリスタインに接触していた事実も判明した。ベギリスタインは昨季までカンプノウでディレクターを務めていた人物だ。

 もちろん、オーナーの目論み通りにチェルシーの「バルサ化」が進むという保証はない。しかし、アンチェロッティの首の危うさは変わらないと思われる。

【次ページ】 上位との連戦を落とすとアンチェロッティも絞首台送り。

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