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<わたしの愛する山遊び> 旅のルポライター・土井正和が愛する「温泉名山」 ~「登る」と「浸かる」は1セット~ 

text by

小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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photograph byMasakazu Doi

posted2013/10/01 06:00

<わたしの愛する山遊び> 旅のルポライター・土井正和が愛する「温泉名山」 ~「登る」と「浸かる」は1セット~<Number Web> photograph by Masakazu Doi

湯治場の雰囲気が残る酸ヶ湯は日帰り入浴もできる。

 また、下りは湿原を通るから、花も草も多くて、紅葉の時期はとくに圧巻。標高の低い山ですけど、緯度が高いから森林限界は低い。だから途中で針葉樹のちょっと甘い香りが漂ってきて、僕は好きですね。酸ヶ湯はいまだに湯治場の雰囲気が色濃く残っていて、男女混浴なのが珍しい。日帰り入浴も可能です。

 もし山の中で泊まってもいいなら、北アルプスや南アルプスも候補に入れてほしい。北は秀麗、南は鈍重と言いますか、山の雰囲気がぜんぜん違う。僕は昔から、山が大きくて岩場が少ない南の方が好きで、南アルプスから1つ挙げろといわれれば聖岳を推します。

 聖岳は南アルプスの一番南端にそびえる3000m峰。ここは東海フォレストという会社の山小屋を利用する登山者のみ登山口までのバスに乗ることができて、マイカーでは入ることができない。しかも登山適期は夏だけなので、ちょっと敷居が高い。なかなか行けないから、かえって行きたくなるんです(笑)。

 山頂からの展望は、南アルプスならではの重畳たる稜線が見渡せて感動的です。下山後は、赤石温泉白樺荘の温泉が利用可能で、まだ山懐にいるような、山から出きっていない感じがとても良いんですよ。

健脚なら濁河温泉に泊まって御嶽山を登るルートも。

 3000m峰でいえば、御嶽山も自信を持ってお薦めできますね。北から見るとわりと細い山容だけど、東側から見るとじつに雄大。岐阜と長野の県境にあって、「あの山に登りたい」と強く思うシルエットをしています。

 岐阜側にある濁河(にごりご)温泉に泊まれば、御嶽山は日帰りも可能です。山頂まではかなりキツイから、この山は健脚向き。でも、3000m峰を日帰りで登りたいという人には、その願望を叶えやすい山だと思います。濁河の湯はやや赤茶けていて、よく温まる。共同浴場の露天風呂もけっこう広くて快適ですよ。

 山の温泉って、眺めの良さも大切だけど、それに加えて山に包まれている感じがあるとなお良い。那須岳の西側に三斗小屋温泉があるんですけど、ここはもう完全に山の中。宿は山小屋というより旅館風で、車の行けない場所としては居心地のいい造りです。

【次ページ】 泉質なら白峰三山を下り終えたところの奈良田温泉。

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土井正和

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