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腰痛との戦い、FA、金本の言葉……。
藤本敦士が語る野球人生での“悔い”。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2013/09/13 12:00

腰痛との戦い、FA、金本の言葉……。藤本敦士が語る野球人生での“悔い”。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

阪神からFAで移籍したヤクルトで、ユニフォームを脱ぐ決断をした藤本敦士。通算1000試合出場を果たすことはできるのか。

'11年のCSで輝きを放ったが体はボロボロだった。

 ヤクルトでは、レギュラーを掴むためにアピールするというより、FAで移籍した以上、チームの勝利に貢献しなければならない。そのためのがむしゃらな姿勢は、ホームでのクロスプレーの判定を巡り自身初の退場処分を受けた'10年5月1日の横浜戦のように、プレーにもしっかりと表現されていた。

 ところが……。捲土重来を期したヤクルトで、古傷の腰が悲鳴を上げてしまう。'10年のオフに椎間板ヘルニアの手術をして以降、藤本の出場機会は再び失われていった。

 '11年は、クライマックスシリーズで代打として4打数2安打1打点と好成績をマークするなど、少なからず輝きを放った。しかし、'12年は幅広いフィールディングがさほど求められないファーストしか守れないほど、腰の状態は悪化していたのだ。

 そして今季、9月1日のイースタン・リーグでのロッテ戦の9回に代打として打席に立ち、見逃し三振に終わった藤本は、「プロのレベルにない」と引退を決断した。

「ホッとしたというか、肩の荷が下りたという気持ちだったけど、寂しい部分も出てきた」

21日からの甲子園での阪神3連戦で、がむしゃらなプレーを!

 阪神で現役を全うすれば、引退後にそれなりのポストを約束されていたかもしれない。しかし藤本は、人気球団でのぬるま湯生活を捨て、あえてFA移籍というプレッシャーとの戦いを選んだ。

 結果的にヘルニアの再発もあり、大往生の野球人生ではなかったかもしれない。それでも、「ヤクルト藤本」として引退できたことで、藤本の後悔は間違いなくひとつ減った。

 今季、一軍での出場がない藤本だが、通算1000試合出場の節目まで残り3まで迫っている。大台達成に小川淳司監督も、「できれば達成させてあげたい」と花道を示唆する。

 可能性があるとすれば、21日からの甲子園での阪神3連戦だ。

「自分を成長させてくれた」という古巣との試合。きっと藤本は甲子園のファンに魅せてくれるだろう。

 現役最後のがむしゃらなプレーを。

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