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“準永久追放”処分に抗う、
A・ロッドの自業自得。
~「減刑」を目論んだ大砲の醜聞~ 

text by

李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGetty Images

posted2013/08/26 06:00

“準永久追放”処分に抗う、A・ロッドの自業自得。~「減刑」を目論んだ大砲の醜聞~<Number Web> photograph by Getty Images

 MLB機構は、マイアミのアンチ・エージング・クリニック「バイオジェネシス」が機能増強剤(PED)を供給した疑惑に関連して、8月5日、アレックス・ロドリゲスら13選手に出場停止処分を科した。

 他の選手が50試合であったのに対し、A・ロッドに対する出場停止は211試合。なぜかくも重い処分が下されたのかというと、その理由は、PED使用の濃厚さと悪質さが際だっていたことに加えて、証拠の隠滅を図るなど機構の調査を妨害したことにあった。

 素直に処分に服していれば、今季残り及び来季全試合の出場停止となり、38歳のA・ロッドにしてみればそのまま再起不能となる可能性が極めて高かった。実質的には「永久追放」に匹敵する厳罰だったのだが、異議申し立てを申請したため、その結論が出るまでの間、試合に出続けることが可能となった(結論が出るまで数カ月かかると見られている)。

 ちなみに、A・ロッド以外に異議申し立てをした選手はなく、みな、罪を認めている。A・ロッドにしても、「PEDは一切使用していない」と潔白を主張して異議申し立てをしたわけではなく、「罰が重すぎる」ことが理由だった。出場停止中の年俸は支払われない決まりなので、異議申し立てで「減刑」に成功すれば、減刑分に応じて収入の減少を押さえることができるのである。

処分が長いほど年俸支出を節約できるヤンキースとの微妙な関係。

 一方、ヤンキースとすれば、力の衰えが著しいA・ロッドとの契約は'17年まで総額約1億ドルを残しているため、「出場停止が長いほど年俸支出を節約できる」立場にある。A・ロッドは処分発表直前の記者会見で、自身の薬剤汚染は棚に上げて「僕の出場を妨げると得をするグループがいる」と、暗にヤンキースを批判した。彼にとって最大の関心事が、罪を悔い改めることにあるのではなく、「契約残高をできるだけ多く回収する」ことにあるのは、この一事を見てもあきらかだろう。

 皮肉なことに、A・ロッドは、昔は「薬剤を使わないクリーンな選手」と見られていた。しかし、'09年、スポーツ・イラストレイテッド(SI)誌に「レンジャース時代の'03年に検査で陽性だった」ことを暴露された後、次々とPED絡みの醜聞が噴き出し、いまでは、MLBで一番ダーティな選手と目されている。

【次ページ】 長年のPED依存で、一層薬の必要性が増している。

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