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大儀見優季がチェルシーで好発進。
「W杯王者」という期待を背負って。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2013/08/25 08:01

大儀見優季がチェルシーで好発進。「W杯王者」という期待を背負って。<Number Web> photograph by Getty Images

加入直後から試合に出場し、早くも信頼をつかみつつある大儀見。なでしこジャパンで培ったポゼッションへの意識と、ドイツで身に着けた力強さで、どこまでチームを引き上げられるか。

デビュー戦からチームに溶け込み、存在感を発揮した。

 更に、デビュー戦直後のピッチサイドでは、 「率直に楽しかったです」と笑顔も見せてくれた。

「自分の描くフットボールの原理原則が、そのままピッチに現れていました。 チームにポゼッションの意識が浸透していて。ポツダム時代のように、あれこれと余計なことを考えることなく、直感的にプレーできました」

 たしかに、新たなホームとなるロンドン郊外南西部ステインズのピッチで、大儀見は生き生きとプレーしていた。周囲から「ユーキッ!」と頻繁に声が掛かる中、スルーパスや浮き球でチャンスメイクを試み、ダイレクトでロビング気味のシュートまで狙った姿は、「まだ周りの名前も分からなくて」と苦笑する新顔とは思えなかった。

 エマ・ヘイズ監督は、4-2-3-1システムのトップ下で大儀見を起用した。ビルドアップを好む元アーセナル・レディース助監督は、チームに欠けていた中盤と前線のリンク役として新戦力に期待をかけたわけだが、これは大儀見の望むところ。中盤深くまで下がった時間帯も含めて効果は覿面で、試合後には「今まではこんなにパスがつながらなかった」と、チームメイトから加入のインパクトを讃えられたという。

「発展途上」のチームに必要不可欠な大儀見の経験値。

 但し、就任2年目の指揮官が認めているように、チームは「発展途上」にあり、取り組むべき課題は多い。例えば、ドンカスター戦の終盤に大儀見が1トップに押し上げられると、2列目からのパス供給が滞ってしまった。翌週のアウェイゲームでは、リンカンの果敢なプレスに零封されている(0-2)。続くリバプール戦では、2度のリードを守れずにアウェイ2連敗となり(3-4)、5位に順位を下げる結果となった。

 大儀見個人の出来は、この連敗中も悪くはなかった。内容的に負けるべくして負けたリンカン戦でも、イングランド代表のエニオラ・アルコ、スウェーデン代表のソフィア・ヤコブソンの両FWと共に、最後まで何とかしようという意識を感じさせた、数少ない選手の1人だった。試合後には、「若い選手が多いし、経験していかないと上がっていかない部分はあります。でも、今できることを100%実行できるようにする事も大切。その辺は、監督も奨励してくれているので言っていこうと思います」と、チームを引っ張る意識まで覗かせた。

【次ページ】 指揮官も「大儀見のチェルシー」に強い期待をかける。

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