KEIBA VISIONBACK NUMBER

【小島良太の競馬進化論】vol.3 サラブレッドはアスリート!? 

text by

PROFILE

posted2013/08/20 17:50

【小島良太の競馬進化論】vol.3 サラブレッドはアスリート!?<Number Web>

競馬場を全力で駆け抜けるサラブレッドは野球選手やサッカー選手同様、アスリートです。
個人競技という点では陸上選手に近いアスリートでしょう。アスリートには監督がいて、体のメンテナンスを請け負うトレーナーがいます。
競馬の世界では監督が調教師、つまりトレーナーということになりますが、調教師は指揮官でありその役割は監督と同じものです。

僕は調教助手という職種で、英語で表すとアシスタントトレーナーです。
この調教助手という仕事、一体どんな役割を担うのかというと、調教師の指示のもと、毎日の調教に騎乗し、サラブレッドの体作りを行うのが主な仕事です。
アシスタントトレーナーというより「サラブレッドをアシストするトレーナー」と表現したほうが的確かも知れません。

サラブレッドの一週間を大まかに説明すると、月曜日が休日、火曜日が全力では走らない調教、水曜日は実践さながらの調教、木曜日は前日に全力で走った後の具合をみる軽い調教、金曜日と土曜日は月曜日同様の調教、日曜日は水曜日よりも少しセーブした速く走らせる調教、といったトレーニングスケジュールになっています。
実際にレースに出走する馬は土曜日か日曜日に本番を迎えますが、おおよそのスケジュールはこういった具合です。

そして調教を行うトラックには様々な種類があります。砂のコースのダート、芝コース、木屑のウッドチップ、砂や油などを混ぜてできているポリトラック、登り坂を駆け上がる坂路、それにプールなど、多種多様です。
それぞれのコースにメリット、デメリットがあり、その馬にあったコースをチョイスして日々トレーニングに励んでいますが、サラブレッドは人間以上に故障と背中合わせです。
500キロ近い体に人間を乗せ、60キロのスピードで走り、物凄い馬力を発生させながら走るのに、それを支える脚の太さは人間よりも細いのです。

ちなみに馬の場合、「足」という漢字は使わずに「脚」と書きます。
騎乗者が馬の腹をトントンと蹴って合図を送るときも「足で合図を出す」ではなく「脚で扶助を使う」と言い、歩く、早歩きをする、走る、全力で走る、といった4段階の動作も、それぞれ並歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)、襲歩(しゅうほ)といったように読み方は「あし」でも「足」という漢字は使わずに「歩」という漢字が使われます。
この4段階、日本語だと馴染みがないと思いますが、英語にすると、ウォーク→トロット→キャンター→ギャロップ。
この単語は耳にする機会もありますよね。

話が脱線しましたが、サラブレッドのか弱い脚を故障させないようにトレーニングしたりケアしたりするのが僕たちに与えられた最も重要で、最低限守らなければならない決まり事です。
前回触れましたが、馬は本来、逃走心に満ち溢れた性格です。走るからには常に全力で走ろうとします。しかし毎日、いや2日連続で全力で走れば間違いなく、腱を痛めたり、骨折したりしてしまいます。
陸上選手のように「ダッシュ10本!」といった負荷はかけられません。
競馬の世界では馬のスピードは全て「ハロン・・秒」と表現します。
これは1ハロン、つまり200mを何秒で走るかで表現します。

レース中は大体ハロン11秒から12秒くらいで走るので100メートルに換算すると6秒弱のタイムで2000メートルや天皇賞や菊花賞といったレースでは3000メートルを走り続けます。
どんなに優秀な陸上選手でも100メートル走、いや50メートル走並みの全力疾走を維持したまま3000メートルを走り切ることは不可能でしょう。
しかも背中に60キロ近い鞍と人間が乗っているのですから、その運動能力の高さは凄まじいものだというのは理解して頂けると思います。

また、1000メートルの短距離戦に至ってはレコードタイムは53.7秒という驚異的なスピードが出ています。
日々の調教、そして本番のレース、これを繰り返しながら競走馬としてのアスリート馬生を送っていくのですが、もちろん、トレーニングだけではなく、アスリートの体作りに欠かせないのが食事です。
サラブレッドも人間同様にサプリメントなど補助食品も摂取しており、1ヶ月にかかる食費は1頭につき、約50万円かかります。
トレーニングから食生活の管理まで、アスリートと競走馬は共通する部分がとても多いのです。

さらに、血筋を重要視するということが「ブラッドスポーツ」と言われる由縁でしょう。
競馬をギャンブルとして認識されている方に少しでもスポーツ性を含んでいる、競走馬もアスリート、といった気持ちが芽生えて頂けると幸いです。

ここまで「サラブレッドって何だろう?」、「競馬って何だろう?」といった解説を皆様が身近に感じることができる物と照らし合わせて説明してきましたが、
これから少しづつ、分かりやすく、競馬の世界にご案内したいと思います。

-------------------
プロフィール
小島良太(調教助手)

日本中央競馬会(JRA)・美浦トレーニングセンターの小島太厩舎に所属する調教助手。
1996年JRA年度代表馬のサクラローレルをはじめ、数々の重賞勝利馬の調教騎乗を担当。
助手業の傍らで雑誌・新聞等にコラムを連載し、著書も出版。

本業の競走馬調教ではサクラローレル、サクラスピードオー、サクラナミキオー、
マンハッタンカフェ、プレシャスカフェ、イーグルカフェ、サクラプレジデント、
ブラックカフェ、ストーミーカフェ、アンブロワーズ、アプリコットフィズ、
コロンバスサークル、アロマカフェ、ミッドサマーフェア、ダービーフィズなどの
調教に従事。

ブログ→http://ameblo.jp/ryon518/
Twitter→https://twitter.com/Ryota_Kojima_

関連キーワード
小島良太

ページトップ