JリーグPRESSBACK NUMBER

京都のJ2降格を重く受け止めて……。
不屈の柳沢敦、敗因と未来を語る。 

text by

佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

PROFILE

photograph byTamon Matsuzono

posted2010/11/18 10:30

京都のJ2降格を重く受け止めて……。不屈の柳沢敦、敗因と未来を語る。<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

鹿島や京都などの国内クラブだけでなく、サンプドリアやメッシーナという海外クラブでもプレーした柳沢敦。日本代表として2度のW杯に出場した男は、現役にこだわり続ける

本当に柳沢の能力は錆つき、その時代は終わったのか?

 それまでのリーグ戦26試合出場3得点は、言い訳の利かない成績だった。チームからは育成コーチへの就任要請を受けたが固辞し、京都退団が決まった。

「京都での3年間は、いろいろと貴重な経験をさせてもらいました。本音を言えば、もっと京都でやりたい気持ちはありましたし、来年も京都のために力を発揮したかった。これもプロなので仕方がないですけど、やはり寂しいですね……」

 ヤナギの時代は、終わったのだろうか。

 浦和戦を含め今シーズン、柳沢の動きが錆付いている感はなかった。以前ほどのスピードはないにしろ、スペースを作る動き、堅実なポストプレー、オフザボールの動きなど、巧さは健在だった。つまるところ、京都は戦術的に彼を十分に活かしきれなかったのではないだろうか。ボールを預けた後、誰かが連動してサポートに行けば柳沢のプレーはもっと生きたはずだし、攻撃の幅も広がったのではないか。今の京都でのプレーでは、ボールを預けた後は「頼んだぞ」とほとんど連動する動きが見られなかった。柳沢は、ディエゴやドゥトラのように一人で突破するタイプではないにもかかわらず。

「だからといって、自分のプレーがうまくいかない、点が取れないというのは、言い訳にしかならない。試合に出ている以上は、結果を出さないといけない。だから、こんな結果になってしまって、本当に悔しい。同時に、自分自身に対して腑甲斐なさをすごく感じています。僕は、クラブに対して何もできなかったので……」

「J1、J2のこだわりはないです」

 だが、いつまでも下を向いているわけにはいかない。

 現役続行宣言をした柳沢には、すでに複数のクラブから打診が届いている。一番最初に手を挙げたロアッソ熊本、J1昇格を決めたヴァンフォーレ甲府 、そして柳沢の故郷にあるカターレ富山等々である。

「J1、J2のこだわりはないです。自分を必要としてくれるチームがあれば、そこで頑張りたい。でも、今は移籍に関しては、まだ何も……。残り4試合、京都の試合に集中してからです」

 優勝とJ2降格。相反する経験を持っている選手は、そうはいない。W杯にも2度出場するなど国際経験も豊富だ。そうした経験と彼のプレーをうまく活かすことができれば、最高の戦力になり、若手にとっては最高のお手本にもなる。ヤナギは、間違いなく“買い”のプレイヤーなのだ。

「京都ではここ2年間、満足いく結果を残せなかった。でも、まだまだやれると思っています。カズさんやゴンさんは見習うべき先輩ですし、すごく頑張っている。ああいう姿勢で僕もやっていきたい。だから、現役にこだわったんです」

 視線はまだまだ鋭く、やる気は漲っている。

 16シーズン目となる2011年、日本屈指の技巧派ストライカーは、いったいどこでその勇姿を見せてくれるのだろうか。

BACK 1 2 3
柳沢敦
京都サンガF.C.

Jリーグの前後の記事

ページトップ