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原監督が日本一を託したい男……。
西村健太朗は「神」になれるか? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNanae Suzuki

posted2013/08/19 10:31

原監督が日本一を託したい男……。西村健太朗は「神」になれるか?<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

すでに50試合に登板し、12球団トップの30セーブをマークしている西村(8月15日現在)。防御率も1.38と、抜群の安定感を誇る。

では、絶対守護神とはどういう投手のことなのか?

 絶対守護神――。

 日本一を手にするためにチームが必要としているクローザーとは、技や力がありさえすればいいというものではない。あらゆる場面、あらゆる重圧を跳ね退けて淡々と仕事ができる心の強さ。それを持つ投手であり、その心技の強さがあって初めてクローザーは神となるのである。

 そう考えると昨年の西村は、ボールの威力もあり、シュートの切れ、フォークの落ちもクローザーとして申し分ないものだった。しかし、ただ一つ、最後の最後に心の弱さを露呈してしまったことで、1年間、積み重ねてきたすべてを失ってしまったわけである。

 その苦い経験を踏み台にした今季。西村はもう一度、神の座を手にするべく最後の1イニングのマウンドに立っている。

 チームの快進撃とともに8月14日のDeNA戦では早くも両リーグで一番乗りの30セーブ到達。2年連続30セーブ以上は、巨人では初の記録だった。

「僕一人でできた数字ではない。みんなに感謝したい」

 お立ち台でこう語った西村だが、今年にかける意地はある。

休養日にもかかわらず……原監督にベンチ入り直訴までした西村。

 後半戦を占う天王山と言われた2位・阪神との3連戦初戦の8月2日のことだった。

 試合前の監督室。原辰徳監督がグラウンドに出る準備をしていると、そのドアがノックされた。入ってきたのは西村だった。

 西村は前日までのヤクルト3連戦で3連投し、1勝2セーブをマークしていた。疲労を考慮した指揮官が、この日は西村をベンチから外して完全休養させることをコーチに指示していた。

 それを伝えられた西村が、監督室にやってきたのだった。

「今日は休めと言われたんですけど大丈夫です。僕は今日も投げるつもりで球場に来ていますから、ぜひ使ってください!」

 ベンチ入りの直訴だった。

 もちろんこの心意気を無下にしてはならない、と考えたのだろう。一瞬、困ったような、驚いたような表情を見せた指揮官だったが、すぐに大きく頷いてこう告げたという。

「お前がいるとオレもつい使っちゃうからなあ……。だからベンチから外そうと思ったんだけど、そうか……でも、分かった。今日はベンチに入ってくれ! ただ、もし今日投げたら、明日は絶対に(ベンチから)外すからな!!」

【次ページ】 「オレの希望は最後は健太朗だよ!」

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