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萩野公介、自由形で銀。
53年ぶり快挙の意義。
~世界的マルチスイマーへの一歩~ 

text by

小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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photograph byKYODO

posted2013/08/16 06:00

萩野公介、自由形で銀。53年ぶり快挙の意義。~世界的マルチスイマーへの一歩~<Number Web> photograph by KYODO

3位との差は100分の3秒。世界の舞台での勝負強さも証明した。

 世界的に見れば、水泳における花形種目はやはり自由形だ。マーク・スピッツ、イアン・ソープ、マイケル・フェルプスと、歴史に名を残すスター選手は、いずれも自由形で金メダルを獲っている。

 世界水泳選手権で萩野公介が400m自由形の銀メダルからスタートして、世界的なマルチスイマーの道を歩み始めたことは、さまざまな意味で画期的なことだった。

 まず、萩野が本当の意味で、フェルプスに匹敵する世界的なスター選手になる可能性がこれで開けてきたと言える。自由形でもワールドクラスとなると、世界の注目度が違う。なぜ自由形が花形なのかと言えば、一番速い泳法ということはもちろんだが、世界的に選手層の厚い、競争の激しい種目ということもある。

 男子の100mを例に取れば、今回の世界選手権でも自由形の出場は90人。これに対して平泳ぎは77人、バタフライは59人、背泳ぎは53人。自由形の出場選手が最も多い。また決勝進出候補の選手を数えてみると、自由形では持ちタイム48秒台以下が20人いたのに対し、背泳ぎで53秒台以下は13人。トップレベルの選手層も、やはり自由形が一番厚い。

大型選手が有利とされる中で175cmの萩野が持つ伸びしろ。

 今回、ロンドン五輪銀メダリストの朴泰桓(韓国)が出場していない中で獲得した銀メダルではあったが、萩野の場合、昨年までは個人メドレーだけをやっていて、自由形には出ていなかったことを忘れてはならない。自由形に出場し始めたのは今年3月の話だ。まだまだ試合の経験は少ない。それだけ伸びしろも大きい可能性は高く、その点を考慮すると掛け値なしのメダル候補になったと言っていいだろう。

 泳ぎ方に制約のない自由形では、パワー十分の大型選手が有利なことは間違いない。ロンドン五輪男子100m王者のネイサン・エイドリアン(米国)は201cm。今回400mを制した孫楊(中国)は198cmだ。その中で175cmの萩野がメダリストになったことは意義深い。

 400m自由形での世界大会のメダルは、ローマ五輪の山中毅以来53年ぶりだったわけだが、1950年代までの日本は、むしろ自由形が強かった。戦前の五輪では100m自由形でも金メダルを獲っている。

【次ページ】 真の水泳大国へ、山口観弘と瀬戸大也にもかかる期待。

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