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堀、小林雅、多田野の夢は続く……。
人生をかけたトライアウトの舞台裏。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byGenki Taguchi

posted2010/11/15 12:30

堀、小林雅、多田野の夢は続く……。人生をかけたトライアウトの舞台裏。<Number Web> photograph by Genki Taguchi

 昨年、阪神から戦力外通告を受けた今岡誠(現ロッテ)は、合同トライアウトの独特の雰囲気を体験し、こう本音を漏らした。

「思ったより緊張しました。いやぁ、マジで久しぶりに」

 厳しいプロ野球の世界で実績を挙げた選手ですら、狼狽にも似た感覚を無意識のうちに抱いてしまう。

 それが、トライアウトという舞台。

 11月10日に西武ドームで行われた今年のトライアウトには33名が参加した。例年に比べると参加人数こそ少なかったが、昨年の今岡と同様、知名度のある選手が出ていたので注目度そのものは高かった。

 そのなかでも、ひときわ周囲の目を集めた選手が3人いた。

 彼らは、結果だけが求められるこの場所で様々な思いを抱きながらも、経験を武器に最高のパフォーマンスを見せてくれた。

堀幸一は、日本一になった古巣ロッテの試合を見なかった。

「この日までは正直、考える時間が長すぎたから気持ちに浮き沈みはありましたよ。『早くトライアウトが終ってほしい』と」

 通算1827安打の実績を誇る41歳の堀幸一は、9月11日にロッテから戦力外通告を受けてからの日々をこのように話してくれた。

 クライマックスシリーズ、日本シリーズと、仲間たちの戦いぶりは気になっていたが、試合は見なかった。「今できることをやるために、集中して練習したかったから」だ。

 練習の成果は結果となって表れた。

 第1打席に一塁線をしぶとく破る、堀らしいいぶし銀の安打を放ったかと思うと、2打席目には佐藤誠(ソフトバンク)のスライダーを強振。豪快な一発をレフトスタンドに叩き込んだ。

 アピールは十分。堀も結果には満足していたが、それは打撃に限ったことではなかった。

「まだまだ体が動くことをアピールしたかったから。バッティングよりも、守備もできるということを見せられてよかった」

 セカンドとサードの守備も無難にこなした。代打要員として次の球団へは行きたくない――。それをプレーで訴えたかったのだ。

「肉体的に衰えてはいるけど、力を出せる自信はあるし、(22年間現役を続けてきた)プライドだってあるから。野球ってそんなもんじゃないだろう、と」

 そう、大ベテランは自信をのぞかせた。

【次ページ】 小林雅は「行き先が決まらなくてもイライラしない」。

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