KEIBA VISIONBACK NUMBER

GI最高単勝配当を記録したハイセイコー産駒の足跡。~ユニオンオーナーズクラブ所属サンドピアリス~ 

text by

PROFILE

photograph by

posted2013/08/08 13:40

GI最高単勝配当を記録したハイセイコー産駒の足跡。~ユニオンオーナーズクラブ所属サンドピアリス~<Number Web>

偏西風の大きなうねりとともに、日本列島に暑い夏がやって来ました。
前回、ご紹介したヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン所属のバーバラですが、7月28日の佐世保ステークス(小倉・芝・1200m)に、嬉しい1番人気で出走しました。
スタートから2番手につけて折り合うと、最後の直線ではハナに立ち、後方から猛追してくるミヤジエムジェイの差し切りを許さない粘りの競馬で勝利。
彼女の戦績に、五つ目の着順「1」が飾られました。

今回はバーバラの会員が集う、ユニオンオーナーズクラブについて話していきたいと思います。

日本の競馬界を支える北海道・日高地方の競走馬生産牧場が集まり、牧場系クラブとして、1986年にヒダカ・ブリーダーズ・ユニオンは誕生しました。
毎年、名門牧場を含む30以上の牧場からラインナップされる産駒たちは、馬産地全域を網羅したバラエティーに富む種牡馬と、実績豊富な繁殖牝馬と配合して生産されています。

クラブ発足当初より、参画してきた出口牧場の生産馬ゴールドシップが皐月賞を制するなど、数々の名馬、活躍馬を輩出し、設立26年を越えた現在も、「愛馬と距離感のない」牧場系クラブの良さを生かしながら、競馬ファンと馬産地を夢と信頼の絆でつないでいます。

今年度は、ディープスカイの笠松牧場、スティルインラブ、アユサンの下河辺牧場、ウメノファイバーのYSスタッドなど、多くの名馬を輩出した牧場からも産駒たちがラインナップされ、近年のクラブ重賞勝ち馬であるマンハッタンスカイ、サマーウインド、フレンチカクタスらの活躍が大きな道標となってつながってゆくことでしょう。

歴代の活躍馬として、往年の競馬ファンの間ではよく知られていますが、
エリザベス女王杯を最低人気(20頭中20番人気)で勝利した馬がいることをご存じでしょうか。
クラブ所属馬のサンドピアリス(新ひだか・岡田牧場生産)です。

「昭和の怪物」として人気を博したハイセイコーの産駒には、日本ダービーを勝って父の無念を晴らしたといわれるカツラノハイセイコがいますが、大井の砂で鍛え上げられた彼の娘らしく、「砂の貴婦人」という馬名も艶やかです。
父の力強さもさることながら、母イエンライトは中央競馬のダートで10勝を挙げていることも含め、両親ともに砂に愛され、砂を制する血統だといえます。
サンドピアリスもダートでのみ勝ち鞍をあげていた条件馬でしたが、吉永忍調教師は、主戦ジョッキーの岸滋彦騎手をG1に挑戦させたいと願い、同馬が力のいる2400m(当時)の芝でも十分に適正があると見出して出走の意思を強く表明。
クラブもG1の大舞台でチャンスを生かせるならと抽選にトライします。両者の熱意は実り、無事に抽選を突破して出走が決まった瞬間から、彼女の物語は始まりました。

1989年11月12日。京都。この年のエリザベス女王杯は、今では見ることができない20頭立ての多頭数になりました。
サンドピアリスは、ハイセイコーの娘であることを特筆しても、ダート馬という印象が強く20番人気。
彼女にとって憧れのG1ゲートは、肌を突き刺す寒風の冷たさよりも厳しいものでした。

スタートしてから中団やや後ろに待機し、最終コーナーをなめらかに回り加速をつけると、直線を向いてからは、実況を担当していた杉本清氏を絶句させる次元の違う脚を使い、大外一気の豪快な差し切り勝ち。
クラブ初年度産駒からG1初制覇を成し遂げたのです。なお、このレースは優勝したサンドピアリスが最低の20番人気、2着10番人気、3着14番人気と、人気薄が立て続けにゴールして超大穴配当になり、競馬ファンを喝采の渦に巻き込んだことは言うまでもなく、単勝配当43,060円はグレード制施行後のGI最高単勝配当記録は現在も破られていません。

サンドピアリスは晩年、骨瘤や骨膜といった脚部不安と戦いながら出走していましたが、牡馬顔負けの気持ちで走るタイプの牝馬であることはあまり知られてはいません。
大半のコンビを組んだ岸騎手もそのことをよく理解していて、彼女の強い気性を評価し、より深く理解を示した騎乗を心がけていたといいます。

サンドピアリスのシンデレラストーリーは、まるでフロックのように語られていますが、その後も京都大賞典でスーパークリークに僅差の3着や、京都記念で2着などの成績を残していることや、スタミナを要する2400m級のレースで好走するなど、父から受け継いだ強さの片鱗を窺わせています。
初代アイドルホース・ハイセイコーが残した貴重なG1ホースであるサンドピアリスは、クラブの1期生。彼女の功績は日高の誇りであり、現在も名馬として語り継がれながら、生産牧場にとって希望の象徴になっているのです。

-------------------
プロフィール
上坂由香(エッセイスト)

札幌市生まれ
初めて買った馬券が的中し(ウオッカの日本ダービーで馬単)ビギナーズラックが実在すると身をもって証明。
38歳から乗馬もはじめ馬産地や牧場・乗馬クラブを訪ねては馬と戯れ馬に乗る。
「夜間放牧」と称して飲み歩き知らないおじさんと競馬の話をするのが好き。

第6回Gallopエッセイ大賞受賞
週刊Gallop「競馬の流儀」リレーコラムを連載中
道新オントナWebコラム連載中

JBIS-Searchと競馬ふるさと案内所とのコラボ企画、競馬女子部として活動中
競馬女子部ブログ→http://girls.jbis.or.jp/

関連キーワード
上坂由香

ページトップ