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もはやK-1への登竜門ではない!
2年目「Krush」の推進力。 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySports Graphic Number

posted2010/11/11 10:30

もはやK-1への登竜門ではない!2年目「Krush」の推進力。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

尾崎圭司(写真左)は、大学時代全日本テコンドー選手権を3連覇した実力派。高校時代もフィンスイミングで日本記録を樹立するなど、高い身体能力を持つ

 チームドラゴンに所属するキックボクサー、尾崎圭司は“トルネード・スター”の異名で知られている。テコンドーをベースに持ち、回転系の大技を得意とすることが理由だ。

 10月31日、新宿FACEで開催された『Krush-EX』のメインイベント。尾崎はまさに竜巻のような攻撃で生井宏樹をノックアウトしてみせた。

 序盤は、大きな実績こそないものの、タフな試合ぶりでメインに抜擢された生井のペースだった。尾崎の軸足である左足へローキックを連打。尾崎もローを返すものの、攻撃の数でも精度でも生井が上回っているように見えた。だが、これは尾崎が仕掛けた罠だった。ローキックをあえてディフェンスしないことで、生井の意識を下に向けさせたのである。

 2ラウンドが始まると、“罠”の効果が発揮された。足を攻撃することに集中し、顔面への意識が薄れていたところへバックブローを一閃。さらにバックキックで2度目のダウンを奪うと、最後もバックブローで生井をマットに這わせた。

 2ラウンド1分32秒、3ノックダウンによるKO。ダウンすべてが回転技という試合など、めったに見られるものではない。技の威力だけでなく、技を決めるための仕掛けの巧みさまで含めて“トルネード・スター”の真骨頂と言える闘いぶりだった。

 だが試合後の尾崎は、新たな異名を自ら提案している。

「このリングでは“トルネード・クラッシャー”でいきたいな、と。クラッシャーの頭文字は“K”で。それくらい、Krushが大好きなんですよ」

Krushの魅力は“小回り”のきくマッチメイクにある。

 Krushは、K-1ルールを公式に採用し、K-1との協力関係の中で開催されているイベントである。このリングで勝つことは、K-1出場に直結する。だからこそ、Krushには様々な団体から強豪が参戦し、魅力的なマッチメイクが実現してきた。

 しかしスタートから2年たった今、Krush自体に求心力が生まれ始めている。大会数が限られ、“テレビ用”のマッチメイクも少なくないK-1本戦に対し、Krushは月に一度のペースで開催。“小回り”がきくだけに選手への評価は即、マッチメイクに反映される。機を見るに敏な対戦カードはファンの注目を集め、そのことはさらに選手のモチベーションを高めることにもなる。

 12月12日の後楽園ホール大会からは、Krushの初代王座を決めるトーナメントが開幕する。階級は55kg、60kg、63kg、70kgの4つ。このうち55kg級、60kg級はK-1本戦にはない階級である。特に60kg級は、K-1においては63kg級と“ひとまとめ”にされてしまっていたのだが、Krushではあえて王座を制定することにした。選手に適正な体重で闘う舞台を用意するためだ。

【次ページ】 選手たちが好む、K-1にはないKrushの魅力とは?

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尾崎圭司

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