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ウェブ経由で誕生した、
話題の米国サッカー雑誌。
~欧州と国内ファンを繋ぐ媒体に~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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photograph byRyu Voelkel

posted2013/08/01 06:01

ウェブ経由で誕生した、話題の米国サッカー雑誌。~欧州と国内ファンを繋ぐ媒体に~<Number Web> photograph by Ryu Voelkel

 アメリカのサッカーファンをひとつにする――。そんな志のもとに立ち上がった、全く新しいサッカー雑誌がアメリカで話題になっている。

 '12年に創刊された『HOWLER』は、大々的な広告は一切打たずにスタートしたが、SNSや口コミで名前が広まり、今では多くのサッカーファンの心を掴んでいる。

 同誌創刊人のジョージ・キュライシ氏は、アメリカのサッカーファンはふたつのグループに分けられるという。

「まずは欧州のトップリーグを愛する海外好きのサッカーファン、そしてふたつ目が国内リーグMLSを見るファンです。海外好きは欧州の長い伝統や本物の雰囲気、スター選手のプレーを求めている。MLS好きはアメリカのスタジアムを盛りあげて独自の歴史を築こうとしている。私は両者をひとつにしたかったんです」

 そんな哲学の下、同誌は華やかな欧州だけでなくアメリカサッカーも厚く取りあげるという姿勢を貫く。第3号では「アメリカサッカーのスタイルとは?」という主題の下、同国サッカーのアイデンティティを掘り下げ読者の高い評価を得た。

デザイン性の高い斬新な誌面で、創刊から9カ月で購読者数が3倍に。

 キュライシ氏は『ニューヨークタイムズ』や『ウォールストリートジャーナル』など大手メディアの記事は、熱烈なサッカーファンではなく、一般のスポーツファンに向けた記事が多いと考えていた。増えつつあるコアなファン向けの媒体が必要だと感じていたが、発刊を決意したきっかけはウェブ技術の発展だったという。ウェブ上で個人から資金を募り、プロジェクトを進めるクラウドファンディングサービスの『キックスターター』を財源に創刊号を制作し、フェイスブックやツイッターで宣伝。現在も購読者の大半がSNS経由だそうだ。

 写真やビジュアルにも力を入れ、『GQ』などで活躍したアート系の編集者やデザイナーを迎え入れ、眺めているだけでも楽しめる誌面作りを目指している。斬新な試みは様々な種類のサッカーファンに受け入れられ、創刊からの9カ月間で購読者数は3倍に伸びたという。

 時を同じくして英国でも「利益よりも質を」という、『HOWLER』と似た哲学を掲げる雑誌『The Blizzard』が2010年に創刊された。これまでにはなかったサッカーメディアが、アメリカだけでなく、世界中で立ち上がろうとしている。

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