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ドイツGPでグロージャンが表彰台に。
それでも小松礼雄がうなだれた理由。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byMasahiro Owari

posted2013/07/12 10:30

ドイツGPでグロージャンが表彰台に。それでも小松礼雄がうなだれた理由。<Number Web> photograph by Masahiro Owari

試合後に記念写真に納まるグロージャン(左から3人目)と小松礼雄(左から2人目)。2人の二人三脚は続く。

「セーフティーカーさえ、出ていなければ……」

 今季最高位タイとなる3位をロマン・グロージャンが獲得したにもかかわらず、表彰台の下で担当レースエンジニアの小松礼雄は、そう言ってうなだれていた。そこには、セーフティーカーさえ出ていなければ勝てたという悔恨の念だけでなく、あれがなければ、その後チームオーダーを出さずに済んだという意味も込められていた。

 第8戦イギリスGPでタイヤのバースト(破裂)が相次いだF1は、1週間後に開催された第9戦ドイツGPに、新しい構造のタイヤを持ち込んだ。それとともに、タイヤを供給するピレリは各チームに対して、タイヤの使い方に関して、いくつかの注意点を通達した。そのひとつに、タイヤの左右逆装着の禁止があった。

 今年のピレリタイヤはクルマに装着したとき、構造の一部がクルマに対して左右対称になるため、左右を入れ替えると、進行方向に対して構造が逆向きになるという特徴を持っていた。この特性に気がついた数チームがウインターテストでタイヤを逆に装着させて走らせ、その特性を調査。すると、ロングランでデグラデーション(劣化)を抑制する効果があることが判明。その後、徐々に情報が伝播し、ほとんどのトップチームが行なうようになった。

逆装着の裏ワザを使わずともタイヤに優しいロータス。

 しかしその中で、逆装着を積極的に行わずとも、ロングランで速いチームがあった。それがロータスである。ロータスが逆装着を行なったのは、第5戦スペインGPのみ。しかもそれは、予選Q3でアタックしたタイヤをレースで左右入れ替えて装着し、摩耗の偏りを防ぐ目的だった。逆装着をしなくとも、ロータスのマシンはタイヤのデグラデーションが小さいという特徴があった。

 そのことを証明したレースが第4戦バーレーンGPである。バーレーンは中東特有の暑さと独特のコースレイアウトから、19戦中、1、2を争うタイヤに厳しいサーキットとして知られ、とくにリアタイヤの劣化が激しい。そのバーレーンでロータスは2位と3位に入った。

 今年のドイツGPの舞台であるニュルブルクリンクはリアタイヤに厳しいサーキットではないが、タイヤの逆装着を禁止されて行なわれる今年初めてのグランプリ。しかも構造の一部に使われていた金属製素材がアラミド(合成繊維)に変更され、各チームともタイヤの使い方に苦労することが予想されていた。

【次ページ】 王者ベッテルを追い詰めたグロージャンだったが……。

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