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コンフェデで感じた世界の采配。
駆け引きができる日本人監督を! 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byAP/AFLO

posted2013/07/06 08:01

コンフェデで感じた世界の采配。駆け引きができる日本人監督を!<Number Web> photograph by AP/AFLO

全ての交代カードを使いきった後も、細かな指示をだし、選手たちを鼓舞しつづけたプランデッリ。監督の力が試合の展開に大きな影響を与えるということを改めて知らしめた。

プランデッリのアイデア、デルボスケの反撃。

 今回、3バックは奇策ではなく正攻法だった。この会見で、その理由をこう明言している。

「フォーメーションの変更は苦心の末に導き出した結果という意味ではなく、さらなるアイデアを持っているという意味だ。我々は相手のことも考えなければいけない。完璧なフォーメーションなど存在しないのだから」

 1年前からの大きな違いは、2トップから1トップへの変更だった。最前線に位置するジラルディーノの背後にカンドレーバとマルキージオを並べる。これにより、右サイドのマッジョ、左サイドのジャッケリーニを起点とするサイド攻撃に厚みが出た。1年前の彼らは攻守における負担過多でスタミナ切れを起こしたが、この試合では120分間ピッチに立ち続けられるほど効果的なスタミナ配分に成功した。

 さらに興味深かったのは、スペインの指揮官デルボスケの反撃策である。

 サイドの劣勢を挽回するためにヘスス・ナバスとマタを相次いで投入し、徐々に主導権を奪い返して本来のリズムを得ると、延長前半には最前線でボールが収まらないFWのフェルナンド・トーレスに代えてボランチが本職のハビエル・マルティネスを投入する。この“奇策”について、指揮官はこう振り返った。

「我々は空中戦で苦しみ続けていたので、あれ以上高さで負ける訳にはいかなかった。自陣のペナルティエリアから敵陣のペナルティエリアまで、あらゆるポジションで強さを見せられるハビエル・マルティネスは、あの場面で最適な選手だと考えた。事実、彼はチームに新鮮な活力を与えてくれたよ」

日本と世界の差は、駆け引きレベルの差。

 その言葉のとおり、当たな活力を得たスペインの前にイタリアは防戦を強いられた。結局、試合はスコアレスのままPK戦に突入し、スペインに軍配。結果はともあれ、両指揮官の采配の妙とサッカーにおける監督の権限の大きさ、思い切った一手が持つ影響の大きさを痛感した。

 それから、こうも思った。日本人で、このレベルの駆け引きを演出できる監督が現れる日は来るのだろうか、と。

 日本代表がコンフェデレーションズカップで思い知らされた世界のトップレベルとの決定的な差は、技術でも戦術でもない。技術は世界と比較しても決して見劣りせず、これだけ情報が流通する世の中では試合開始時点での戦術の差も生まれにくい。世界との間にあるのは、絶対に埋まることのないフィジカルの差と、駆け引きのレベルの差だ。

 埋めがたいフィジカルの差を、技術や戦術で補えることはスペインが証明している。しかし駆け引きレベルの差は、おそらくこのままでは埋まらない。ブラジルもイタリアも、そしてスペインも、ボールを奪う瞬間やカウンターを仕掛ける瞬間など、攻守両面でスイッチを入れる瞬間の人数の掛け方と集中力が日本とは違いすぎる。ただし、各国とも、バラバラな個性を一つにまとめてチームとしての連動性を作り出していたのは、あるいはそうなるように促していたのは監督の手腕である気がしてならない。

【次ページ】 日本人のメンタリティを熟知する日本人監督の育成を。

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