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メンツとゼニでこじれた統一球問題。
新コミッショナーには正義の番人を! 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO

posted2013/07/07 08:01

メンツとゼニでこじれた統一球問題。新コミッショナーには正義の番人を!<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS/AFLO

今回の問題を、加藤コミッショナーの個人的な資質の問題にしてしまうのはあまりにももったいない。コミッショナーという存在のありかたについて考える機会として活用すべきだろう。

 昨年6月に加藤良三コミッショナーの再任問題が起こったとき、コミッショナーに求められる資質とは何か、というテーマでコラムを書いたことがある。

 ここ数年、NPBの事業主体としての活動が注目され、球界の将来を見据える上で、コミッショナーにはそれなりのビジネスセンスのある人材を求める声が大きくなってきている。ただ、果たしてそこが主眼でいいのかという問題提起だった。

 あの頃はちょうどワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の参加問題で、労組・選手会と加藤コミッショナーの間に対立の兆しが出ていた頃だった。WBCのスポンサー問題などで、コミッショナーがまったく主体的な決断ができないことへの選手会の怒りが、広く共感を呼んでいた。ボイコット宣言が球界にとってプラスだったかどうかは別にして、この騒動(その後の監督選任問題も含めて)で、改めて加藤コミッショナーの指導力のなさ、経営的手腕の乏しさというのがクローズアップされたことは確かだった。

 そしてそんな“不祥事”の最中に、12球団の中でも、コミッショナーの交代を求める声が起こったのが6月の再任問題だった。12球団の持ち回りで再任の可否を問うたところ、一部球団がこれにハンコを押すことを拒否。結論はオーナー会議まで持ち越される異例の事態となった。結果的には退任を求めるグループも有力候補を擁立できず、擁護派に押し切られる形で加藤コミッショナーの1期留任が決まった。

WBC問題の波紋が消えぬ間に再度生じた、今回の不祥事。

 それから1年後に、再びコミッショナーの資質を問われる問題が起きたわけだ。

 今回の統一球問題では、ともすると、打球がより飛ぶようにスペックを変えながらそれを12球団と選手に告知していなかったコミッショナーとしての責任と、それにともなう会見での「知らなかった」発言がクローズアップされがちになってしまう。

 しかし、加藤コミッショナーが本当にその任に相応しいかという問題で検証しなければならないことは、もっと根が深いのである。

 それはNPBが統一球導入に際して、アグリーメントの反発基準の最低ライン(0.4134)を下回るボールが出てくる可能性を予見しながら、メーカーのミズノに対して契約でそれを認めていたこと。また実際に、導入後の計測でルール違反のボールがかなり出回っていたにも関わらず、「下ブレの許容範囲」として使い続けたことにある。

 要はNPBはルールにそぐわない違反球をメーカーとの契約上も、また実際の試合でも“公認”して、「加藤良三」というコミッショナーのサインを入れて、公然と使っていたということなのである。

【次ページ】 NPBの面子と在庫処理という2つの問題が隠蔽の要因に。

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加藤良三

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