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手本はエディジャパン。
復活に懸ける名門・慶大。
~石巻での早大戦で見せた成長~ 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

PROFILE

photograph byNobuhiko Otomo

posted2013/07/06 08:00

細身だったFB児玉健太郎も肉体を強化。頑健なフィジカルを生かした鋭い突破が光った。

細身だったFB児玉健太郎も肉体を強化。頑健なフィジカルを生かした鋭い突破が光った。

「僕たちは大学の部活動ですから、被災地に何かを与えるとか、そんな立場じゃない。文武両道を実践して、ひたむきにプレーする姿を見た方が、何かを感じていただけたら嬉しいです」

 謙虚な言葉に、誠意と自信がにじんだ。6月2日。大学ラグビー伝統の対決、早慶戦。43対5で完勝した慶大の和田康二監督は、被災地・石巻で試合をした感想を聞かれ、静かな口調で答えた。

 対抗戦グループでは昨季まで2年連続5位と、低迷の続く慶大の新しい指揮官は、1999年度の「創部100周年優勝」時に3年生だったクールな司令塔。とはいえ、大学卒業後は外資系証券会社に勤務。コーチを務めた年もあったが、現場からは遠ざかっていた。その間、ラグビーの環境は、戦術、技術、分析、トレーニング理論……すべてが激変した。

 しかし、謙虚さはハンディに立ち向かう力になる。和田監督は就任が決まると、トップリーグで活躍する後輩たちの話に耳を傾け、最新のトレンドを吸収した。日本代表の菅平合宿に出向いてエディ・ジョーンズの指導を見つめ、助言を請うた。日本代表と同様に早朝のウェイトトレーニングを取り入れ、それまで選手の自覚任せだった朝食を徹底させ、授業優先を貫きながら、強く大きな身体を作る生活サイクルを確立させた。

密集で押し切るFW、タックルを突き抜けるBK……頑健な戦いぶり。

 石巻の早慶戦では、その成果が早くも現れた。慶大はSO宮川尚之主将をはじめ、盛り上がった筋肉でジャージーがはち切れそうな選手が並び、FWは密集で早大を押し切り、BKはタックルを突き抜け、トライを量産した。

「ほんの3カ月足らずで、見違える身体になった選手もいます。みんな、帝京大が強くなった理由もそこにあると知っているし、トレーニングにも食事にも意識高く取り組んでくれている。いい流れができてきたと思います」(和田)

 試合が行なわれた石巻フットボール場は、震災後は自衛隊の救援基地となり車両や資材で埋め尽くされていた。今も周囲には仮設住宅が並ぶ。復興への道のりは、まだ始まったばかりだ。

 それでもスタジアムには満員の3500人が集った。そこで見せた慶大の頑健な戦いぶり、練習時間や人材確保に制約の多い中での真摯な取り組みは、被災地への前向きなメッセージになったと思う。

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