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<秩父宮が燃えたウェールズ撃破> 田中史朗 「日本ラグビーを変えるために」 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

PROFILE

photograph byYuka Shiga

posted2013/07/04 06:01

スーパーラグビー日本人選手第1号に相応しい
圧巻のプレーでウェールズ戦勝利に貢献。
だが満足することはない。彼を突き動かすのは、
日本ラグビーに対する“危機感”だった。

「日本のSHは素晴らしい」

 ウェールズのヘッドコーチや選手は、異口同音に称賛した。

「彼が優れているのは事前に知っていたけれど、ゲームコントロールが素晴らしかった」
(6月8日、第1戦後のロビン・マクブライド臨時ヘッドコーチ)

「ハイランダーズでプレーしていることは知っていたが、ボールの扱いが優れているし、経験値が高い。彼は日本チームに良い影響を与えている」
(6月13日、メンバー発表会見でのCTBジョナサン・スプラット)

 6月15日、日本がウェールズを破る。

 その象徴こそ、両チームの先発30人で最も小柄な男、日本代表SH田中史朗だった。

南半球の世界最高峰リーグの日本人プレーヤー第1号となった田中。

田中史朗 Fumiaki Tanaka
1985年1月3日、京都府生まれ。伏見工高、京産大を経て、'07年に三洋電機(現パナソニック)加入。'08年5月のアラビアンガルフ戦で初キャップを獲得。'11年W杯NZ大会に出場。'13年、スーパーラグビー所属のハイランダーズと契約し、日本人第1号に。166cm、75kg。

 田中は世界最高峰リーグと謳われる南半球のスーパーラグビー(SR)でプレーした、日本人プレーヤー第1号だ。昨年春、同じパナソニックのHO堀江翔太とともに、ニュージーランド(NZ)のオタゴ代表に留学し、ITM杯でのプレーを経て、オタゴを拠点とするSRのハイランダーズと契約。2月22日の今季初戦、チーフス戦で、オールブラックスのSHアーロン・スミスとの交代で出場した(オーストラリアのメルボルン・レベルズ入りした堀江と同日のSRデビューだったが、時差の関係で、第1号の栄誉を得たのは田中だった)。

 田中の加わったハイランダーズは今季、開幕8連敗と不振を極めた。しかし、途中出場ながらFWを巧みに操り、ゲームのスピードを上げる日本人SHは、ラグビー王国で高い評価を獲得。5月18日、南アフリカのブルズとのアウェー戦では初トライも決め、6月1日、オークランドを拠点とするブルーズとのライバル対決では2度目の先発出場でチームを前に出す圧巻のゲームリード。チームを今季最多得点での勝利に導くと、2日後には神戸の宿舎で日本代表に合流。南緯45度、NZで最も南に位置し、すでに最低気温が0度近い冬のダニーデンから、早くも真夏日が続く日本への移動。そんな過酷なスケジュールでも、田中はエネルギッシュに動き続けた。

 12月に始まったプレシーズンキャンプから半年間、SRでの経験は何をもたらしたのか。

<次ページへ続く>

【次ページ】 個々のレベル以上に違いを感じるのは“意識の高さ”。

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