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6月だけで4人も補強したリバプール。
2年目ロジャーズ監督の本気度と勝算。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2013/07/03 10:30

6月だけで4人も補強したリバプール。2年目ロジャーズ監督の本気度と勝算。<Number Web> photograph by Getty Images

6月22日にセビージャからリバプールに移籍したルイス・アルベルト(右)。昨シーズンはローン先のバルセロナBでプレーした。

失点数が減らなくとも、得点数さえ増えれば……。

 理想を言えば、守備力も強化したい。ジェイミー・キャラガーが引退したCBには、新たなバックアッパーとして、移籍金なしでマンチェスター・シティからコロ・トゥーレを手に入れた。

 GKには、ベルギー人のシモン・ミノレをサンダーランドから引き抜いた。全盛期を過ぎた感のあるペペ・レイナに対し、25歳のミノレは、ウェストハムのユッシ・ヤースケライネンに次ぐ、プレミアリーグ2位の149セーブで昨季を終えた成長株だ。

 リバプールの失点数は、マンチェスター・ユナイテッドと同じ「43」。単純に計算すれば、仮に守備力が横ばいでも、得点数でリーグ王者との15点差を縮めることができれば、トップ4争いに参戦する可能性が高まると考えることはできる。

 来季の中盤より前では、精神的支柱のスティーブン・ジェラード、メトロノーム役のジョー・アレン、小回りの利くファビオ・ボリーニも、手術を必要とした故障に別れを告げてプレーできる。

優勝戦線にくい込むためにはスアレスの残留が大前提。

 ロジャーズ自身は、「優勝も狙えると思っている」とさえ言っている。たしかに、来季のプレミアに断トツの優勝候補は存在しないと思われる。但し、リバプールのタイトルレース参戦は、ルイス・スアレスの残留が大前提だ。

 昨季プレミア2位の23得点を上げたスアレスは、第34節での噛み付き行為で長期出場停止を言い渡されていなければ、26得点のロビン・ファンペルシと、最後までリーグ得点王を争っていたに違いない。リーグ戦で10アシストも記録したエースは、9ゴール13アシストのジェラードを凌ぐ、一大原動力だった。

 そのスアレスは、レアル・マドリーへの移籍を仄めかしている。リバプールに「愛着はある」が、自身を10試合もの出場停止に処したイングランドのリーグと、自身を槍玉に挙げたイングランドのメディアに、「嫌気が差している」のだと言う。

 トラブルメイカーが移籍希望となれば、普通は売却が妥当だ。しかし、リバプールのスアレスに限っては、残留説得が得策と思われる。少なくとも60億円台の移籍金収入が見込めるにしても、チャンピオンズリーグはおろか、ヨーロッパリーグすらない来季を前に、新たな「スアレス級」を呼び寄せることは不可能に近い。

 複数の新戦力で得点数の穴埋めを図るにしても、タイトルを争う上では、ここ一番でワールドクラスならではの決定力が物を言う。

 昨季のマンUではファンペルシの存在が優勝の決め手となった一方で、ファンペルシを売ったアーセナルはオリビエ・ジルーやサンティ・カソルラのゴールで得点数の減少を前年比2点だけに抑えても、4位が限界だったように。

 前述した昨季終盤の強豪対決で、スアレスはトッテナムから先制点と決勝のPKを奪っている。チェルシー戦でも1ゴール1アシストと、相手DFに歯を立てずとも、十分に牙を剥いていた。

【次ページ】 ファウラーら、OBたちもスアレスの残留を待望する。

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