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すべてが初体験だった、
井戸木のメジャー制覇。
~全米プロシニア王者、51歳の素顔~ 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

PROFILE

photograph byKYODO

posted2013/06/30 08:00

最終日に5打差を逆転し全米プロシニアを制した井戸木は全米プロ選手権の出場権も獲得。

最終日に5打差を逆転し全米プロシニアを制した井戸木は全米プロ選手権の出場権も獲得。

 全米プロシニア選手権(5月23日~26日)で優勝を果たした51歳の井戸木鴻樹が、スターツシニア(6月14日~16日)の初日に61というハイスコアを出した。これは、日本シニアツアーの新記録だ。

「全米プロシニアのときに、一生分のパッティングが入ったと言いましたが、この日も、一生分入った感じです」と、豪快な笑顔を見せた後、「やっぱり、メジャータイトルを獲ったということで、みなさんに注目されて、恥ずかしいゴルフは見せたくないですから」と、口を引き締めた。

 日本人のメジャー制覇は1977年の全米女子プロ選手権で優勝した樋口久子以来、日本男子プロでは初の快挙である。

 いま井戸木はその重みをひしひしと感じているはずだ。試合に出場すれば、これまでとは違った注目を浴びる。

「応援してくれるギャラリーも多いし、ペアリング(試合で一緒に回る同組の選手)も中嶋常幸など有名選手ですし(笑)。それに取材の量も増えて、何もかもこんなに忙しいものなのかと」と、本人も苦笑する。

ボールマーク用の500円玉を協会職員にプレゼントする優しさ。

 井戸木にとっては、すべてが初体験だった。初の渡米、初の米国での試合出場、そして初のメジャー制覇。言葉も通じない中で、身振り手振りで意思を伝える。

 それでも、「ワクワク感がいい意味で(高揚感に)変わったんだと思う。なんか練習ラウンドから、いい感じでこれました」と前向きにとらえた。

 その上で「いつも通り、自分のゴルフで、平常心」という姿勢を貫いたことが、結果に結びついたのだろう。

 井戸木のことを「あいつはいい奴だ」と、選手仲間たちは口を揃えて評する。張りのある声と笑顔で挨拶を交わし、他人への気遣いもできる。ただ、その快活なキャラクターの陰には、人知れぬ努力と苦労もあったに違いない。

 彼が全米プロシニア選手権の期間中に使っていたボールマーク用の500円玉は、すり減っていた。そんな大切なコインを大会期間中、通訳などいろいろとお世話になった日本プロゴルフ協会の女性職員にプレゼントしたという。

 井戸木鴻樹という選手は、強さだけでなく、そんな優しさも兼ね備えているのである。

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