詳説日本野球研究BACK NUMBER

スカウトの隠し玉も登場する、
全日本クラブ野球選手権の魅力。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

PROFILE

photograph byALL ASHIKAGA CLUB

posted2010/09/27 10:30

スカウトの隠し玉も登場する、全日本クラブ野球選手権の魅力。<Number Web> photograph by ALL ASHIKAGA CLUB

14年連続出場を果たした強豪・全足利クラブは、初戦で新日鉄大分ク相手に2度のリードを守り切れず、3-2で逆転負け。6年ぶりの優勝はならなかった

クラブチームからプロ入りを目指す選手たち。

 9月15日に行われた第3試合、全足利クラブ(以下全足利)対新日鉄大分ベースボールクラブ(以下新日鉄大分ク)戦に合わせて14時頃西武ドームに着くと、前の試合がまだ行われていた。バックネット裏に目をやると、何と巨人のスカウトが既に2人いた。そして、全足利のシートノックが始まる頃には阪神のスカウトが2人、そしてソフトバンクのスカウト4人がやって来た。

 後ろの席に陣取ったベテランスカウトA氏に「誰を見にきたんですか」と聞かれたので、パンフレットを開き、「右のエース・小川哲矢(日出暘谷高校→新日鉄大分ク)はMAX147kmのストレートを軸にバッターをねじ伏せるタイプ」の個所を見せる。「Aさんは誰を見にきたんですか?」と逆に聞くと、全足利のエース・本間裕之(聖光学院高校→シダックス)だという。

「隠し玉だったんだけどなあ、2球団いるんでびっくりしちゃった」

 どうやら育成ドラフトで指名するつもりだったらしい。

「本ちゃんで指名するんですか」とさらに聞くと、「プロの夢を叶えてやりたいしね」と、微妙なニュアンスで逃げられた。

全足利と新日鉄大分クにはプロ野球選手輩出の実績も!

 本稿の前段で、「クラブチームは楽しさのほうに力点が置かれている」と書いたが、企業チームの激減により、「まだ現役で野球をやりたい、できればプロをめざしたい」という選手がクラブチームに増えている。

 本間が所属する全足利は、現在ロッテに所属する岡田幸文(外野手)、'08年まで楽天などに所属していた小倉恒(投手)を輩出し、新日鉄大分クは'03年まで都市対抗に5回出場している元企業チームで、これまで山下和彦(近鉄・捕手)、日野善朗(大洋・投手)、岩崎久則(オリックス・投手)、本田明浩(ダイエー・捕手)、竹下慎太郎(横浜・投手・※大分硬式野球倶楽部出身)のプロ野球選手を輩出している。そういう両チームの背景がプロをめざしたい若者を引き寄せ、さらにスカウトを引き寄せる力になっている。

【次ページ】 本間のキレのある変化球はプロの世界でも通用するか?

BACK 1 2 3 NEXT

プロ野球の前後の記事

ページトップ