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中国が「わざと」負けた?
世界卓球、異変の裏側。
~“一強状態”からの脱却を~ 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2013/06/26 06:00

中国が「わざと」負けた?世界卓球、異変の裏側。~“一強状態”からの脱却を~<Number Web> photograph by AFLO

 卓球界に異変が起きた。5月の世界選手権でのことだ。中国が男子ダブルスとミックスダブルスで金メダルを逃したのである。世界選手権4大会連続で全種目優勝を続けてきたことを考えれば、「まさか」と言ってよい出来事だ。

 しかも、男子ダブルスで優勝経験を持つペアが別の選手と組んで出場するなど全力で勝ちに来ていないかのような姿勢に、「わざと負けたんじゃないか」と考える向きもあるほどだ。

 それが単なる勘ぐりとは言い切れない事情がある。卓球は、中国が他を圧倒する成績を残し続けている。さらに中国からの帰化選手が各国代表に名を連ねてきた。まるで中国勢のみで五輪を含めた国際大会が争われているかのようなありさまが人気低迷につながりかねないと、国際卓球連盟も対策を講じている。'08年には国籍を変更した選手の出場制限を設け、同年の北京五輪で中国が男女個人戦の表彰台を独占したことから、'12年のロンドン五輪では出場枠を1国あたり各3名から2名に減らしたのだ。

一時期は五輪種目からの除外が水面下で話題になることがあった。

 連盟の方針に中国も賛同してきた。好成績は喜ばしくとも競技自体の地位が低下すれば意義も薄れる。ましてオリンピックから外れるようなことがあれば……。実際、一時期は五輪種目からの除外が水面下で話題になることがあったという。連盟が先手を打って改革に取り組んできた効果もあってか、除外候補として浮上することはなかったが、中国一強状態が続いていけば、この先どうなるかは分からない。ロンドン五輪で、中国男子の劉国梁監督が「中国の独占はいいことではない。世界の卓球そのものの発展を望んでいます」と語ったのもその表れだ。

 中国も手をこまねいていない。'09年には「養狼計画」というプロジェクトを開始。コーチを各国に派遣して強化の手助けをしてきた。今年4月の韓国オープンで、他国の選手に呼びかけ、中国の選手とのペアでダブルスに出場したのも「ライバルを育てたい」という意図だ。

 この文脈で考えると、劉国梁監督の世界選手権後のコメントは興味深い。

「('16年五輪の)リオへ向けての最大の脅威は松平健太です」

 中国の元五輪金メダリストらを破るなど躍進した松平の台頭に、半ば喜びも込められていたのだろう。

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