A代表の将来のため、U代表を軽視してはならない。

　人選を担当する両代表の監督も、育成プロセスをより強く意識すべきだ。今回は、マンチェスター・シティのジャック・ロドウェルが、有意義な経験を積む機会を逃した。オールラウンドな22歳のMFは、3月にハムストリングを痛めたが、先発した最終節に2ゴールを決めたように上り調子でシーズンを終えていた。

　にもかかわらずピアースは、故障再発のリスクを嫌ってU-21代表への招集を避けた。一方、当初は候補外とみなしていたホジソンは、故障者の穴埋めとして急遽ロドウェルをA代表に呼んだ。結果は、ブラジル戦での7分間出場。

　両監督に、継続的なプロセスへの共通理解があれば、ホジソンはU-21代表合流を勧め、ピアースはメンバーに招集して、ロドウェルにA代表での20、30倍の出場時間を欧州選手権で与えることができた。

「プレッシャーの大きさと、対戦相手のクオリティに驚いた」とコメントしたのは、U-21欧州選手権で敗退後のウィルフレッド・ザハ。来季からマンUでプレーする攻撃タレントでさえ「教訓になった」と言うのだから、A代表の将来を思えば尚更U代表を軽視してはならない。

イングランド再建への道のりはいまだ遠い。

　イングランド再建は、当初、早ければ18年W杯でと思われていたが、現時点では22年W杯までかかるという見方が主流だ。それも、10年あれば昨秋にオープンした協会運営の新トレーニングセンターの効果が現れると踏んでのこと。

　だが、最新鋭の育成の「器」も肝心の「中身」を育てる姿勢が徹底されていなければ、150億円の無駄遣いに終わる。イングランドが、「もしも」予選を突破すれば、ブラジルのピッチでは10年前と同じく「ルーニー頼み」と言われるだろう。その14年W杯は未だ遠く、W杯での栄光は更に遠い。