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60年ぶりの快挙達成。
山本昌の「悪あがき」。
~日本シリーズ初勝利に向かって~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byKYODO

posted2010/09/18 08:00

60年ぶりの快挙達成。山本昌の「悪あがき」。~日本シリーズ初勝利に向かって~<Number Web> photograph by KYODO

 9月第1週からの巨人戦・阪神戦を、優勝争いをする上で重要なポイントと位置づけていた中日・落合博満監督。9月3日から始まる巨人戦では、今季初めてネルソン、吉見一起のローテーションの順番を変えて3連戦に臨んだ。

 力で押すタイプの吉見で勝ってプレッシャーをかければ山本昌の巧投が生きてくる、と落合は踏んだのだ。相手が力んだ時こそ、力を抜いて冷静に投げられる45歳に大一番を託したのである。監督の期待に応えた山本昌は、9月4日の巨人戦で111球を投げ完封。60年ぶりに最年長完封勝利の記録を更新したのだった。

「最後の悪あがきって言うのかな」とニガ笑いをしたのはラジコン、クワガタ虫繁殖等の趣味を全てやめて、今季に賭けようと話をした時のことだ。趣味を絶ち野球に全てを捧げた結果、8月7日の阪神戦で6回を1失点に抑え今季初勝利。23年連続で勝ち星を挙げ、西武の工藤公康の持つ記録と並んだのだ。

 その後、先発ローテーションを勝ち取り、4勝目を最年長完封記録で飾ったのだから、落合監督も嬉しいはず。だが9月4日の快挙にも少しも嬉しそうな顔をせずに「1点とられたら交代だったけどな」とポツリ。8回、ベースカバーに入る際、足がもつれるほど疲れていた山本昌が最後まで踏ん張れたのは、落合監督独特の突き放しに燃えていたからなのかもしれない。

 若手のひとりが肩が痛い、というのを聞いて山本昌はこう答えたという。

「痛くない箇所を探して投げればいい」

通算200勝以上を挙げながら日本シリーズは未勝利。

 実働25年で何度も経験した故障との戦い。今春も左肩後部に痛みが発生した。投げ方を変えながらの再起だった。

「痛いから投げない。それを言ったら終わってしまうから」と本人は語る。

 落合監督も言う。

「若い連中には感じられない、生き延びるための必死さが伝わってくる」

 シーズン終盤、上位3チームの熾烈な戦いが続く中、優勝の味を知るベテランの存在が、中日の精神的支柱になることは間違いない。

「ひとつ勝つと、次も頑張ろうという意欲が出る」と言う山本昌。通算209勝を挙げながら日本シリーズ未勝利の左腕が、ここに来てもうひと頑張りする気になったのは確かである。

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