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リベリーもロッベンも意のままに!?
“対話型”リーダー、ラームの流儀。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2013/06/15 08:02

リベリーもロッベンも意のままに!?“対話型”リーダー、ラームの流儀。<Number Web> photograph by AFLO

CLに優勝し、ミュンヘン空港に到着した飛行機から、ハインケス監督と共にビッグイヤーを掲げながら降りてくるバイエルンのキャプテン、ラーム。ドイツ代表でもキャプテンを務めている。

ラームらの“対話型”リーダーシップとは?

 CL優勝を含む3冠という偉業の前では、もはや誰もラームとシュバインシュタイガーの流儀を否定することはできない。彼らのスタイルは近代的リーダーシップとして、時代の最先端に躍り出た。

 では近代的リーダーシップとは、どんなものなのか? 彼らのリーダーシップのスタイルは、一言で表せば“対話型”だ。

 ラームはこう説明する。

「力で従わせる時代はもう終わった。現代的なリーダーとは、コミュニケーションを試みて、成功の可能性を高める人間だ。自分にはその資質があると信じている」

 たとえば今季、こんなことがあった。

 昨季のCL決勝でPK戦の末にチェルシーに敗れたバイエルンは、さらなる進化が不可欠だった。ハインケス監督は攻守の切り替えに重点を置き、全員にボールを奪われた瞬間に守備を始めることを要求した。

 だが、リベリーやロッベンといった個人主義者たちが、素直に従うか分からない。昨季の悔しさから最初は取り組んだとしても、次第にさぼり始める可能性もあった。

 そこでシュバインシュタイガーは、リベリーとロッベンにこう呼びかけた。

「もしフィリップ(ラーム)が全速力で戻って、相手からボールを奪ってもお客さんは拍手を送らない。当たり前のプレーだからだ。でも、君たちが戻ってボールを奪えば、大きな拍手を浴びるだろ?」

 カーンが北風なら、ラームとシュバインシュタイガーは太陽。チームメイトに強要するのではなく、コミュニケーションによって本質を語りかけ、自ら行動するように導くのが近代的リーダーシップだ。

キャプテンを務めて生まれ変わったカッサーノ。

 対話型のキャプテンが成功を収めているのはドイツだけではない。

 ユーロ2012の約1年前、イタリア代表のキャプテンを務めていたGKブッフォンは、プランデッリ監督にこう提案した。

「カッサーノを次の試合のキャプテンにしたらどうだろう?」

 カッサーノはストライカーとして優れた能力を持っているものの、気性が荒く、ちょっとしたミスや相手からのラフプレーで自分を見失ってしまうことがあった。そこでブッフォンは、あえてキャプテンマークを巻かせることで、責任感を植え付けようとしたのである。

 プランデッリ監督は提案を快諾し、カッサーノはスペインとの親善試合でキャプテンとしてピッチに立った(試合はイタリアが2対1で勝利)。カッサーノはこの経験を通してチームメイトから大切にされていることに気がつき、ユーロ2012では全試合に先発出場し準優勝に貢献した。

【次ページ】 コンフェデの修羅場で長谷部に求められるもの。

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