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二塁打量産中の「打者・大谷翔平」。
好調支える“流し打ち”と“中田翔”。  

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2013/06/12 12:25

二塁打量産中の「打者・大谷翔平」。好調支える“流し打ち”と“中田翔”。 <Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「(打者として)塁に出て、息が上がったままマウンドに行っても、間合いを長くしたりして工夫していかないと」と語るなど、“5番・投手”の準備に余念のない大谷。

 一軍初登板となった5月23日のヤクルト戦で、最速157キロの快速球を投じ観衆の度肝を抜いた。続く6月1日の中日戦では初勝利を手にするなど、投手としてのスタートは順調と言えるだろう。

 しかしながら、日本ハムの「二刀流ルーキー」大谷翔平は現時点では、「打者」としての評価を急速に上げつつある。

 6月9日のヤクルト戦。

 前日に続き5番に座った大谷は、2回の第1打席でいきなり魅せる。

 ラルーの外角低めのストレートに素早く反応。鋭い打球がレフトフェンス上部の防球ネットへ突き刺さる。あわやプロ初アーチになるかという弾丸ライナーの二塁打は、栗山英樹監督も唸らせるほどの一打だった。

「(スタンドまで)行ったと思ってベンチの前まで出たのに、『なんで(全力で)走ってるんだろう?』って」

8度のマルチ安打と10本の二塁打に見える中距離打者としての資質。

 完璧に近い打球を放ちながら、しかし大谷本人は、「捕られたかと思いましたけど、風に助けられました」と淡々と振り返るのみ。4回2死一、二塁のチャンスで左中間を深々と破るタイムリー二塁打を放っても、「中田(翔)さんがヒットで繋いでくれましたし、いいところで打てて良かったです」と、その表情に慢心の色はない。

 それでも、数字は「打者・大谷」の好調ぶりを正直に物語っている。

 野手としてのスタメン出場が17試合ながら、マルチ安打は8回。打率も3割3分3厘(63打数21安打)まで伸ばし、規定打席に達していないものの、パ・リーグトップの14本まで4本差に迫る10本の二塁打を記録しているのだ(6月9日現在。以下同)。

 もちろん、高打率や二塁打が量産されている事実は特筆すべきことではある。それ以上に着目すべきは、大谷がいかにしてミドルヒッターという立ち位置を確立しようとしているか、だ。

【次ページ】 自己分析能力の高さを感じさせる流し打ちの多さ。

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