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女子アメフトで米国代表に。
鈴木弘子が歩む激動の人生。
~今年で49歳、自然体のアネゴ肌~ 

text by

内田暁

内田暁Akatsuki Uchida

PROFILE

photograph byTsutomu Kishimoto

posted2013/06/11 06:00

現在は、自宅のあるロサンゼルスのチームに所属。米国の世界選手権V2に貢献できるか。

現在は、自宅のあるロサンゼルスのチームに所属。米国の世界選手権V2に貢献できるか。

 6月にフィンランドで開催される第2回女子アメリカンフットボール世界選手権のアメリカ代表に、「BettySUZUKI」と呼ばれる女性が選ばれた。彼女の本名は、鈴木弘子。今年9月で49歳になる、浅草生まれの生粋の日本人だ。東京のスポーツジムで働いていた鈴木が、アメフトと運命の出会いを果たしたのは30歳の時。友人に誘われ「お稽古感覚」で始めた瞬間から、豪快かつ緻密なこの競技の虜になる。

 米国プロリーグのトライアウトを受けるため、つてもないまま単身渡米したのは2000年のこと。その日から現在に至るまで、幾つものチームを渡り歩いてきた。

 長いキャリアの中で複数のポジションをこなしてきた鈴木だが、基本は常に体を張って相手とぶつかるライン。100kgを超える大型選手が集う中、173cm、65kgと体格で劣る鈴木の武器は速さと技術、そして、分厚いプレイブックを瞬時に覚え実践する高い戦術理解度にある。さらに生まれ育った下町で育んだアネゴ肌的な気風の良さが加わり、経験豊かで面倒見の良いベテランは、どこでもチームの中心となった。

全米王者で一区切りではなく、世界一を目指して国籍を変更。

 現役を続ける最大のモチベーションは悲願の全米チャンピオンだったが、昨年、サンディエゴ・サージの一員としてその夢をついに達成。普通なら、ここで一区切り……となる所だが、米国代表トライアウトの話を聞き「世界一になるチャンスかも」と、新たな挑戦に心動かされた。ただし代表になるには国籍を変えなくてはいけない。

 そのことに迷いがないわけはなく、「ご先祖様に悪い気がした」とさえ言う。だが「ずっと“アメフトの鈴木”だった自分が、アメフトのために国籍が変わるのも不思議ではないかも」との想いが、ふと胸をよぎる。結果、トライアウトでは180名以上の猛者の中から、見事全米代表の座を勝ち取った。

 周囲から見れば、激動そのものの人生。だが当の本人は「流れに乗ってきただけ」と、どこまでも自然体だ。だからこそ、今の自分や不確定な未来をも「運命」だと受け止められると言う。代表でのポジションは、QBにスナップを出すセンター。彼女がボールを動かさなければ味方も試合も動かない――文字通りのチームの中心を、鈴木は担うことになる。これもまた、運命だ。

※この記事が雑誌Number829号に掲載された後の6月3日、米国市民権取得が難航した
ことにより米国代表を外れたことが、鈴木弘子選手自身のフェイスブックで発表されました。

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