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松山英樹を感嘆させた“緩急の差”。
中嶋常幸が次代に伝える勝負師の魂。 

text by

桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO

posted2013/06/06 10:31

松山英樹を感嘆させた“緩急の差”。中嶋常幸が次代に伝える勝負師の魂。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS/AFLO

後続に2打差をつけた9アンダーで、今季2勝目を挙げた松山(写真左)。ウィニングパットを沈めた直後には「(中嶋に)“外したらぶっとばすつもりだった”と言われたので入ってよかったなと思いました(笑)」と喜びを語った。

「魅力のある若い選手が出てくるのは嬉しいけれど……」

 中嶋は結局、松山に4打差を付けられて敗れた。

 8番を終えた段階では、一時単独トップに立ったが、直後のダブルボギーでつまずき6位でフィニッシュ。それでも、この対決が今後、シーズンの名勝負に数えられることに疑いの余地はないだろう。

「オレを何歳だと思ってるんだ!」

 敗戦の直後、前日に続きインタビュールームに入るなり、中嶋は会場を包んだ重苦しい空気を、一瞬で笑いに変えた。そして「魅力のある若い選手が出てくるのは、先輩として言わせてもらうと、嬉しいね。次を担って行ってくれるんだろうなあっていう選手がいると」と将来性豊かな逸材の姿を想い、目を細めた。

 しかし「悔しい気持ちは変わらないね」と、キャリアで何度も味わってきた敗戦の味が、次第に甦る。

「ただ悔しさをにじませるか、にじませないかの違い。若い時はね、誰が見ても『悔しいんだな』という感じだったと思う。今は、『本当に悔しいのかな』という感じじゃないかな。結構、悔しいのよ。まあ、それが“年輪”というものですかね」

 持つ言葉が増え、表現力は年を重ねて豊かになる。ライバルたちやファンとの距離の取り方も、巧みになっていく。けれど、勝負師としての性は変えられない。

 レジェンドへの敬意と、後人たちへの期待に満ちたこの日の18ホール。ゴルフファンにとって、なんとも幸福な梅雨の合間の日曜日だった。

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