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須藤元気 「レスリング部監督はベストセラー作家」 ~元格闘家の超ポジティブ読書術~ 

text by

高橋秀実

高橋秀実Hidemine Takahashi

PROFILE

photograph byHirohiko Ikeda

posted2010/09/06 06:00

須藤元気 「レスリング部監督はベストセラー作家」 ~元格闘家の超ポジティブ読書術~<Number Web> photograph by Hirohiko Ikeda
突然の引退から3年半。リングを沸かせた男は
今もあらゆる分野で多彩な才能を発揮し続けている。
常に我々を驚かすトリックスターの真の姿とは。

 かつてK-1などで活躍した格闘家、須藤元気さんは今やすっかりベストセラー作家である。生き方を指南する『風の谷のあの人と結婚する方法』をはじめ、四国巡礼を綴った『幸福論』、青春小説の『キャッチャー・イン・ザ・オクタゴン』……。着実に読者を獲得しているようで、売れない専業作家の私などからすると羨ましいやら妬ましいやら終いには腹が立ってきそうだが、彼によれば、それは「ネガティブな思考」(『幸福論』)。「周波数をチューニングし直す」(『風の谷のあの人と結婚する方法』)必要があり、そのためには「プラス思考」(同前)の人に会ったほうがよいとのことなので、直接ご本人にその心得をたずねることにしたのである。

「実は、僕は20歳までほとんど文字は読んでいなかったんです」

 彼は爽やかにそう語った。本ではなく文字? まるで無文字文化に育ったかのようなのだ。

――なぜ、なんですか?

「本当に文字を読むのが嫌いでした。多動性症候群ではないですけど、ずーっと座って何かをする集中力が続かなくて」

――読書以外でも、そうだったんですか?

「いや、文字を見ると“やらされている感”に襲われたんですね」

 彼は学校教育に馴染めず、小中学校時代の記憶がないほどだという。夢中になったのは漫画とファミコン。小学校低学年の頃に『がんばれ元気』を読んで、ボクサーを志したが、ファミコンのやりすぎで視力が落ちてあきらめたらしい。ちなみに『がんばれ元気』は父親の愛読書でもあり、主人公の堀口元気にあやかって彼は「元気」と名付けられた。

「女性にモテるには本を読まなくてはと気づいたんです」

『がんばれ元気』
小山ゆう著 小学館文庫

――でも、体育は得意だったんでしょう?

「体育もできるほうじゃなかったんです」

 はにかむ須藤さん。

――そうだったんですか?

「5段階中ずーっと3で。僕は本当に小さくてひょろくて、球技もダメで泳ぎもダメですし、走りも遅いですし。高校時代にレスリングを始めてプロの格闘家になると決めたんですが、フィジカル以外のものでカバーしていかないと到底無理だなって思いまして」

 プロの格闘家を目指して拓殖短期大学に進学。全日本ジュニア選手権で優勝した後、アメリカに渡りプロに転向するのだが、ちょうどその頃、本(文字)を読み始めたらしい。

「奈良県出身のみっちゃん、という女性と付き合っていたんですけど、彼女がすごい読書家だったんです。ヒマさえあれば文庫本を読んでいる。その姿を見て女性にモテるには本を読まなくてはいけないと気づいたんです」

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