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日本ではあり得ない、
夏の大型移籍の「意味」。
~MLBシーズン半ばの特別な一日~ 

text by

四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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photograph byYukihito Taguchi

posted2010/08/23 06:00

ヤンキース入りとの噂から一転、トレードでレンジャーズに移籍した左腕、クリフ・リー

ヤンキース入りとの噂から一転、トレードでレンジャーズに移籍した左腕、クリフ・リー

 シーズンでもっとも落ち着かない季節が、ようやく過ぎ去った。7月31日のトレード期限日は、移籍の可能性が高い選手だけでなく、ほぼ全選手が、特別な一日として認識する日である。

 特に、今季は例年以上に各チームが積極的な動きを見せた。期限最終日だけで40人以上(後日確定選手を含む)が動いた。ア・リーグ西地区首位を走るレンジャーズは、球宴前に左腕リーをマリナーズから獲得したのをはじめ、ジャイアンツからモリーナ、マーリンズからカントゥら、実績のあるベテランを補強した。2年連続世界一を目指すヤンキースも、締め切り直前にアストロズの大砲バークマン、インディアンスのクローザー、ウッドらの大物を獲得。シーズン佳境とプレーオフを見据えた補充を行なった。

各チームの方向性が現れる期限日直前のトレード。

 日本球界では考えられないような大型トレードが成立する背景には、米国のビジネスライクな思考があることは否定できない。優勝戦線から離脱したチームにすれば、契約切れ間近の高年俸選手を消化試合で使う理由はなく、より迅速に若手選手への世代交代を進めたい。その一方で、好位置にいる球団首脳は補強に動くことでチーム全体のモチベーションを上げる狙いがある。裏を返せば、補強に動かないチームは、プレーオフ進出を断念すると解釈されてしまうのが常識だ。実際、かつてマリナーズの主力投手だったネルソンや、ツインズ時代のサンタナが、補強に動かなかった自軍首脳に対し、「このチームは勝つ気持ちがない」と批判し、騒動になった。プレーオフ進出の可能性を残すチームにすれば、他チームのエース級や主力打者が加われば勢いも増す。だからこそ、この時期のトレードは、単にチームの弱点を補うことだけが狙いではない。

 目の前の勝利か、再建か――。シーズン半ばを過ぎ、改めてチームが目指すべき方向性を示すのが、期限日直前のトレードと言える。

 大補強に踏み切ったドジャースのトーリ監督は、俊足巧打の外野手、ポドセドニックをロイヤルズから獲得した直後、冷静に言った。「彼は何かを起こしてくれる選手。人間的にも大好きなんだ」。現有戦力の士気を高めるための大型トレード。一見、冷酷なようでも、実は「情」を度外視しているわけでもない。

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