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ミランとCL権を争うフィオレンティーナ。
モンテッラ監督の改革は成就するか? 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2013/04/27 08:01

ミランとCL権を争うフィオレンティーナ。モンテッラ監督の改革は成就するか?<Number Web> photograph by Getty Images

「(勝ち点差1の4位でミランを追いかける)今の順位はシーズン終盤戦で非常に好都合。これからの試合はこの上なく重要なので、必ず勝利したい」と語っているモンテッラ。

ローマ、カターニャで監督として活躍したモンテッラ。

 現役時代、非凡なゴールセンスを武器にセリエA通算141ゴールを挙げたモンテッラは、若き理論派監督として表舞台に帰ってきた。

 古巣ローマの育成部門指導者だった'10-'11年シーズン、終盤15試合に急遽監督として指揮を執ることになりチーム崩壊の危機から救った。昨季率いたカターニャでは前年までのスタイルを一変させ、小気味良いパスサッカーを展開、“ミニ・バルサ”の異名をとった。

 モンテッラは就任1年目のフィオレンティーナでも、ボールポゼッションを重視し、ショートパスで相手を崩すバルセロナ・スタイルを実践させている。

 この新生ヴィオラ(=フィオレンティーナの愛称)には、王者ユベントスや強豪ナポリも手を焼いてきた。

 鍵を握るのは、今季集められた技巧派のMFたちだ。

 かつてのチームメイトである指揮官から全幅の信頼を与えられたダビド・ピサーロは、中盤底の司令塔として完全復活を遂げた。“ルイ・コスタの再来”と呼ばれ、レアル・マドリーのカンテラ育ちのボルハ・バレロは、チームにスペイン流のリズムをもたらした。リーグ屈指の右ウイングに成長したクアドラドは、右サイドをドリブルで疾駆する。

 プレースタイルもバックボーンも異なる面々をごく短期間でまとめ上げる手腕こそ、モンテッラの真骨頂。今もベースになっているのは、多感な育成年代の指導経験だ。

「一流気取りの選手を手なずけるより、毎日成長する14歳と向き合う方がよっぽど難しい。大事なのは、見かけより本質を見ることだ」

3位ミランと同じ対戦カードがあと3試合残っているが……。

 フィオレンティーナは、5年前の'07-'08年シーズンにも、ミランとの激しいCL出場権争いを経験している。プランデッリ(現イタリア代表監督)に率いられた当時のチームは、カカ擁する前年CL覇者ミランを最終的に勝ち点差2でうっちゃり、見事本大会出場を果たした。

 今季の見所は、34節以降のラスト5試合のうち、対戦相手をミランと同じくするカードが3つもあることだ。

 最下位で降格必至のペスカーラはともかく、EL出場を諦めないローマ戦は双方にとって鬼門だろう。フィオレンティーナにとっては、シエナとのトスカーナ・ダービーでの消耗を最小限に抑えたい。

【次ページ】 CL出場を絶対条件とするミランには強いプレッシャーが。

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