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北嶋なき柏レイソルを背負う2人のFW。
工藤壮人と田中順也、急成長の理由。 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byAFLO

posted2013/04/26 12:35

北嶋なき柏レイソルを背負う2人のFW。工藤壮人と田中順也、急成長の理由。<Number Web> photograph by AFLO

大黒柱、北嶋が抜けた穴を工藤壮人(右)と田中順也が競うように埋めている。ACLとJリーグの二正面作戦をレイソルが突破できるかは2人の若者にかかっている。

メディアに注目され、代表にも呼ばれた田中だが……。

 2011年の活躍によって、田中を取り巻く環境は劇的に変化した。

 メディアからの注目度は飛躍的に高まり、代表に呼ばれたことで自信も欲も持った。昨季の田中には、そうした変化に適応する力がなかったというのが個人的に抱いている感想だ。おそらく、入れ替わるようにして活躍した工藤の存在も、田中にとってはネガティブに作用したのではないかと想像できる。

「もちろん悔しさはありました。正直、それでモチベーションが上がらなかったこともあります。でも、そういうことも踏まえて、今はそんなんじゃいけないって。工藤は、とにかくコンディションを安定させるために最善を尽くしているし、試合に出れば点を取れる。そのためにシュート練習から本当に集中しているし、特にチャンスに対しての執念というか、ストライカー気質ですよね。オレは2011年に13点取って、去年はダメでしたけど、工藤はそういう部分もちゃんと安定させている。アイツのメンタリティーの強さを見ていると、もうベテランじゃないかなって思いますもん(笑)。それに比べて、オレは若かった」

 それからこう続ける。

「オレも負けちゃいけないですけど、正直、ゴール数で勝負してもラチがあかない。逆にアイツが出来ない部分で貢献しないと。人より動くこと、ヘディングで味方につなぐこと、中盤の守備、そういうところで貢献して結果を求めないと」

「抜け出しとクロスの精度を持続させることが第一」

 まさにその言葉を体現したのが、前述の第5節名古屋戦だった。

 前半4分、左サイドに流れて最終ラインからのロングフィードを受けた田中は、相手のプレッシャーを感じながら見事なトラップでボールの勢いを殺し、そのまま勢いを殺すことなく、左足で素晴らしいクロスを上げた。

――僕が見ていて「これだ」と思ったのは、名古屋戦のアシストでした。後ろから来たボールのトラップ技術というよりは、トラップからクロスまでの流れ。コーナーフラッグ付近のあの位置から、無理な体勢にもかかわらずあの質のクロスを蹴れること。

「なるほど。確かにそうかもしれませんね」

――まさに工藤選手だけじゃなく、他の選手にもできないプレーだったなと。しかも、そのクロスを工藤選手が決めたところに大きな意味があるというか。

「そうですね、確かにあのプレーはデカかったですね。オレのコンディションもすごく良かった試合ですし、その後のゴールにも絡めたので。そういう意味では確かに……オレはあの抜け出しとクロスの精度を持続させることが第一なのかもしれません。あのプレーは、コンディションがいいから“抜ける動き”に力を使っていない。トラップにも余計な力が入っていなくて、クロスだけに力を注げたプレー。それができたことが、去年との違いかなって思います。それにしてもすごいですよ、あのワンチャンスを決める工藤は(笑)」

【次ページ】 まったく異なる性格をしている2人のストライカー。

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