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<南アW杯韓国代表> 脱・主従が生んだ躍進。~「選手ミーティング」の効能~ 

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慎武宏

慎武宏Mukoeng Shin

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photograph byFIFA via Getty Images

posted2010/07/28 10:30

<南アW杯韓国代表> 脱・主従が生んだ躍進。~「選手ミーティング」の効能~<Number Web> photograph by FIFA via Getty Images

 目標だった16強進出を果たした韓国。その成功の要因としては史上最多10人を数えた海外組の多さ、李青龍(イ・チョンヨン)ら若手の台頭といった“個の充実”が真っ先に挙げられるが、集団としてのまとまりがあったことも大きい。

 平均年齢は27.1歳で、最年長の李雲在(イ・ウンジェ)と最年少の金甫ギョン(キム・ボギョン)の歳の差は16歳も開いていたが、特筆すべきは試合前日になると、全体会議のあとに監督やコーチが退席し、選手だけのミーティングが実施されたことだろう。今年1月からKFAがスカウトとして雇ったイングランド出身のリチャード・ベイツ分析官が作成した資料をもとに、選手だけで自由に意見交換しながら対策を確認し、そのやり取りを許丁茂(ホ・ジョンム)監督も積極奨励したというのだ。大敗したアルゼンチン戦後も選手同士で敗因や修正点が話し合われたというのだから驚かずにはいられない。

儒教的主従関係から脱却し、フラットな人間関係に。

 何しろ韓国は儒教が生活宗教として社会全般に浸透し、長幼の礼を重んじるお国柄だ。日本や欧米では珍しくはない選手だけのミーティングだが、韓国ではサッカーでも監督と選手は主従関係になりがちで、指示系統はトップダウンの一方通行だった。

 だが、前回代表監督時の高圧的で過度な選手管理を反省した許丁茂監督は、選手たちの自主性を尊重し、朴智星(パク・チソン)にその雰囲気作りを任せた。「韓国人の情緒上、監督やコーチがいるよりも、選手同士でミーティングしたほうが自由な雰囲気になる」とは朴智星の言葉。長い欧州生活を通じて、年功に囚われないフラットな人間関係がもたらす気軽さや、活発な意見交換が生み出す信頼関係の力を知る彼のリードでチーム内の風通しは良くなり、個性的で合理さを好む若い選手たちも遠慮なく発言できるようになったわけだ。

“疎通の力”と呼ばれる一体感がもたらした成功。

 そんな若手からの要求を、李栄杓(イ・ヨンピョ)や李雲在らベテランが包容力たっぷりに受け止め、ときには若手が彼らを励ますこともあったという。ナイジェリア戦で同点PKを献上するミスを犯した金南一(キム・ナミル)も告白している。「試合後に朴主永(パク・チュヨン)が“先輩、大丈夫ですよ”と慰めてくれたときは涙が出そうになった」。

 韓国では“疎通の力”と呼ばれるチームの一体感。その成功は、今も年功序列や目に見えないヒエラルキーが存在する韓国社会に一石を投じる、強烈なメッセージにもなったかもしれない。

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