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Jリーグの選手は過保護なのか?
西村W杯審判員が伝えた意外な事実。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byNaoki Nakanishi/JMPA

posted2010/07/29 10:30

Jリーグの選手は過保護なのか?西村W杯審判員が伝えた意外な事実。<Number Web> photograph by Naoki Nakanishi/JMPA

南アW杯で活躍した岡田ジャパンの選手たちは、屈強な相手選手の当たりにも倒れず戦えたように見えた。変えるべきはJリーグでの気持ちなのか身体なのか?

日本の選手たちは接触プレーですぐに倒れてしまう。

 では、なぜJリーグのときは、すぐに笛を吹くように見えるのだろう? 西村主審はその理由をこう語った。

「日本の選手たちは、フィジカルコンタクトがあるとすぐに倒れる。でも、接触があって倒れたら、ルール上、ファウルはファウルなので、レフェリーとしては笛を吹かなければいけないんですよ。それに対して、W杯では選手たちがぶつかられても、体が強いから踏ん張ることができる。だから笛を吹く必要はない。正直、そういう面では、W杯の方が判定するのが楽でした」

 選手の体が強いか弱いか――。それが結果的に、W杯とJリーグで笛に違いがあるように見えることにつながった、ということだ。西村主審は日本人選手の体が強くなることを願いながらも、だからといって、そういう方向に導くように判定の基準を変えるつもりはないのである。

 Jリーグのアグレッシブさを増すための即効薬を、審判に求めてはいけない。それが今回の取材でよくわかった。

Jリーグでも、もっとレフェリーの話を聞く機会を!!

 ただし、加えてもうひとつ感じたのは、Jリーグのレフェリーの考えや主張を日常的に聞く機会があれば、もっと課題が明確になるということだ。

 現在、Jリーグでは試合後に主審や副審に取材することは認められていない。

 ドイツでは試合後すぐに審判がTVカメラの前に立ち、判定についてコメントすることが求められる。たとえ誤審をしても、なぜそう判断したかを自らの言葉で説明しなければいけない。

 すべての試合でレフェリーへの取材をオープンにすることはできないかもしれないが、まずはW杯を経験した西村主審など数人に限定し、カメラの前に立つ機会を設けてはどうだろうか。

 そうすれば、Jリーグのレベルが上がるだけでなく、審判への敬意が増すきっかけにもなるはずである。

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