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優勝争いから脱落したマリナーズは、
エースを「商材」に未来へ投資する。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2010/07/26 10:30

優勝争いから脱落したマリナーズは、エースを「商材」に未来へ投資する。<Number Web> photograph by Getty Images

 メジャーリーグ、 7月末のトレード期限が迫ってきた。

 最近、ツイッターなどで「どうしてメジャーリーグでは、チームのエースをシーズン中にトレードに出してしまうのか?」という質問を受ける。

 たしかにマリナーズはオールスター前に素晴らしい投球を見せていたクリフ・リーをレンジャーズに放出してしまった。見返りに獲得したのは一塁手のジャスティン・スモークに加え、マイナーリーグの選手ばかりで即戦力とは程遠い。

 なぜ、エースを放り出してしまうのか? 

 そこにはメジャーリーグの「経営のプロ」としての発想があるからだ。クリフ・リーのケースを振り返りながら、メジャーリーグの発想を4つのステップで追ってみた。

度重なる誤算がマリナーズにエース放出を決断させた。

(1) なぜ、リーを獲得したのか?

 昨季のオフ、リーを獲得したマリナーズは絶賛された。これで「地区優勝を狙えるチームになった」と評価されるようになり、私自身もそう思っていた。

 リーは投手の実力を図る指標である「K/BB」、四球に対する三振の割合が異常に高く(四球をほとんど出さないのだ)、しかもマリナーズの本拠地であるセーフコ・フィールドは左翼が広いため、サウスポーは結果を出しやすい。リーの獲得で確実に15勝は計算できると見られていた。

(2) 誤算。リーが開幕で出遅れる。

 しかしリーはスプリングトレーニング中にケガをしてしまい、開幕に間に合わなくなってしまった。今季のマリナーズの誤算はここに始まったと思う。もし、彼が4月頭から登板していれば勝利数が2、3個違っていたかもしれない。

 5月、リーの先発試合をシアトルで取材したときは、彼の淡々とした投球に感銘を受けた。安定しているのだ。マリナーズはリーが登板する5日に一度は確実に勝利を期待できたが、「貧打」を極め(94試合を終えた時点で1試合当たりの平均得点は3.31。これじゃ勝てるわけがない)、6月の時点で優勝争いから脱落してしまった。さあ、ここからが「ビジネス」の登場である。

【次ページ】 エースといえども「商材」。これがアメリカ流の捉え方。

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