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「花巻東」怪物対決を制した
菊池雄星の意地とプライド。
~勝負に徹した大谷への配球~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2013/04/19 06:00

「花巻東」怪物対決を制した菊池雄星の意地とプライド。~勝負に徹した大谷への配球~<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

「怪物と呼ばれる人は、僕を含めて多いですが、大谷は本物です」

 菊池雄星に憧れて花巻東に進学し、甲子園の土を踏んだ大谷翔平について、先輩である西武の17番はこう評す。一時はメジャーを目指した二人の対決が3月30日の開幕第2戦で実現した。

 菊池はルーキーを立ててはいたが、本心は少し違っていた。高校の恩師・佐々木洋監督には「先輩として負けるわけにはいきません」と話していたのだ。

 大谷との初対戦は、2回1死一塁の場面で巡ってきた。“注目されるのは僕じゃなくて大谷の方だから”と冷静な姿を装っていたが、マスクをかぶる炭谷銀仁朗は、菊池の気負いを見抜いていた。

「雄星に緊張するなと言うのは無理なので、いろんな球種を使って、最後はボールになるスライダーで組み立てた」という第1打席は、空振りの三振を奪う。

杉本コーチも「次は真っ直ぐでドンドン行ってほしい」と期待。

 1点リードで迎えた4回1死一・二塁の第2打席では、初球のストレートがすっぽ抜け。だがその後、スライダーを4球続け、ストレートを見せ球にして、最後はまたもスライダーで三振に仕留めた。菊池はこの日、6回途中で降板したものの、被安打4、無失点の好投。チームに今季初勝利をもたらした。プロ入り4年目にしてようやく開幕ローテを掴んだ男は、初登板で白星がついたことでホッとしたのだろう。岩手から観戦に訪れた両親と食事をした際には、いつも以上に饒舌だったという。

 西武の杉本正投手コーチはよくこんな風に言う。「速いボールを投げて喜んでいるうちはまだアマチュアだ」

 昨シーズンから杉本の指導を受けている菊池は、前日に岸孝之のストレートを捉えた後輩を相手に、真っ直ぐで挑みたい気持ちを抑え、勝負に徹した。そんな菊池を杉本は「スライダーで抑えることばかり考えて、楽なピッチングを覚えるとロクなことはない。次は真っ直ぐでドンドン行ってほしい」と厳しく見守る。

 かつて野茂英雄が藤井寺球場で清原和博と対戦したとき、ストレートを続けて三振に打ち取った。イチローと初対決した松坂大輔は、スライダーで三振に仕留めている。ボールゾーンに逃げていくスライダーでやられた大谷は、次の対戦で何を待っているのか。今年のプロ野球の注目対決になりそうだ。

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