トドメを刺したのはC・ロナウドでもメッシでもなく……。

　後半19分、MFシュバインシュタイガーが放ったFKをマルティネスが右足アウトサイドで合わせる。跳躍したブッフォンが一度は弾いたボールを、ダイビングヘッドで飛び込んだマンジュキッチがゴール右隅へ押し込んだ。

　その時点でユーベの選手たちは、逆転突破には4ゴールが必要なことを悟った。3年ぶりの大舞台で、“イタリアの貴婦人”にトドメを刺したのは、C・ロナウドでもメッシでもなかった。

　イタリア代表で固めたユーベ自慢の守備陣を破ったのは、泥臭くプレスを仕掛け続けたマンジュキッチであり、後半ロスタイムに2点目を決めたチームの4番手FWピサロだった。

オイルマネーに頼らず、クラブを大きく、強くする方法を模索する。

「欧州では、ドログバのような超一流FWがいるチームが勝つ」

　昨季のファイナルでバイエルンを破り、チェルシーに悲願のビッグイヤーをもたらしたイタリア人監督ディマッテオは、CLを勝ち抜くにはトップレベルのスコアラーが必要だと説いていた。

　それに対し、移籍市場で豊富な資金力を使えないユベントスの指揮官コンテは、今季のベスト16ラウンドでセルティックを下した後、「CLで優勝を狙うチームを作るなら、最低1億2000万ユーロはかかる」と自嘲気味に言い放った後、力説した。

「バックに石油王がついているマンチーニ（マンチェスター・C）やアンチェロッティ（パリSG）が、『ゼロから始めて優勝を狙えるには5、6年かかる』と言うんだ。彼らと別のやり方で頂点を狙うには忍耐が必要なんだ」

　2011-12年シーズンのクラブ売上高を比較すると、ユベントスの1億9900万ユーロ（約259億円）に対し、バイエルンのそれは3億3200万ユーロ（約433億円）に達するとされている。1.67倍の規模の差は大きいが、両者に共通するのは、欧州サッカー界の巨大潮流になりつつあるオイルマネーに頼らず、サッカー中心主義ともいえる経営哲学を貫こうとしている点だ。自前のスタジアムを揃えたユベントスは、ようやくドイツ勢と同じ土俵に立ったところなのだ。

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