完璧な“準備とやる気”でWBCに臨んだドミニカ代表。

　大会初の無敗優勝からも想像できると思うが、まさに投打ともに他を圧していた。

　WBC開幕前はロビンソン・カノ選手を中心とする強力打線が注目されがちだったが、最後は投手陣の凄さが際立った。結局8試合通算のチーム防御率は1.75。球数制限がある特殊ルールや大会日程を考えて、ドミニカは3人の先発投手以外すべて中継ぎ陣を揃えたというのも大いに効果を発揮したようだ。

　だが今回のドミニカの強さの最大の理由は、選手たちの“準備とやる気”に尽きると思う。

　ドミニカの選手たちは1次ラウンドの第1試合からまるでプレーオフを戦うような集中力をみせており、他チームの選手たちとは試合に臨む姿勢がまったく違っていた。前述通り投手陣の仕上がり度は大会を通じて他を圧していたし、野手達も攻守にわたり怠慢なプレーをまったくみせることはなかった。

「皆が真剣に取り組んでくれており、チームもまとまっていた」

　今回ドミニカのGMを務めたモイゼス・アルー氏はチームについて以下のように解説してくれた。

「皆がこの大会に真剣に取り組んでくれており、チームも1つにまとまり最高の雰囲気が出来上がっている。メジャー選手の中にはフルシーズンではないがウィンターリーグにも出場している選手もおり、皆コンディショニングを整えて大会に参加している」

　選手の真剣さについては別の証言者もいる。今回、MLBと選手会からの要請でドミニカのストレングス・コーチを務めたパイレーツの百瀬喜与志氏だ。

　実は百瀬氏の本来の任務は1次ラウンドが開催されたプエルトリコで、ドミニカ、プエルトリコ、ベネズエラの各チームのコンディショニングを統括、指導することだった（MLBの各チームが代表チームを信頼しきれずに、参加選手が大会中もきちんとキャンプ同様のコンディショニングを継続しているかを確認する担当者を送り込んだもの。この点からもWBCの不安定な本質が理解できるだろう）。ところが、ストレングス・コーチ不在のドミニカに関しては、百瀬氏が同コーチも兼任することになってしまい、結局監督やチームの要請で最後まで帯同し続けていたのである。

「立場上僕から何かを指示することはできず、チームから要請があれば手伝うというかたちでした。それでも監督から選手たちを走らせてくれとか積極的に指示も受けましたし、選手たちもベテランの人たちが他の選手たちに声をかけながらチームをまとめ、自分たちで率先してしっかりコンディショニングを行っていました」

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