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ブブゼラ騒動で考えた、
野球と音の正しい関係。 

text by

四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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photograph byAFLO

posted2010/07/11 08:00

ブブゼラの音についてマーリンズのロスは「男と女が同時に悲鳴をあげているよう」と語った

ブブゼラの音についてマーリンズのロスは「男と女が同時に悲鳴をあげているよう」と語った

 6月19日、マーリンズ対レイズ戦の試合前、先着1万5000人の観客にラッパが配布された。バブルヘッド人形をはじめスポンサーのロゴ入りグッズで集客増を狙う企画は、メジャー各球団とも熱心である。今回、マーリンズが地元サンライフ・スタジアムで配ったのは、サッカーW杯で話題を集めた南アフリカの民族楽器「ブブゼラ」だった。

 物珍しさもあったのか、試合中はラッパの音が球場内に響き渡り、あまりの音量に審判団が耳栓をしてグラウンドに立つほどだった。さらに、9回のマーリンズの選手交代の際、変更事項が正確に伝わらず、打順間違いでアウトになるハプニングまで起こった。1点差で競り勝ったものの、試合後、レイズのマドン監督は「隣にいたコーチとも話ができなかった」と、不快感を隠さなかった。

 基本的にメジャーの球場では楽器の持ち込みが禁止されており、インディアンスの左中間外野席で名物となっている「ドラムおじさん」などの例外を除き、鳴り物は聞こえてこない。

球場5階の記者席まで届いたドジャース黒田の雄叫び。

 だからといって、日本の鳴り物応援を否定するつもりはない。個別のテーマソングや統制のとれた応援のリズムを、励みにしている選手も少なくないからだ。甲子園の高校野球にしても、応援団の太鼓やブラスバンドが風物詩のようになっており、鳴り物のない試合はおよそ想像できない。実際、かつてイチローは、日米の応援スタイルの違いについて「別のものと考えたらどうでしょう。トランペットもブラスバンドもひとつの文化として、独自のものを作り上げる意識を持つといいのでは」と話したことがある。

 メジャーでも、イニング間などには、エレクトーンの伴奏やノリのいい曲が流れる。その一方で、プレーが始まると同時に静まり返り、1球ごとに歓声やため息が漏れてくる。ブブゼラが配布された翌日の20日。フェンウェイパークで行なわれたレッドソックス対ドジャースの6回裏2死二塁、ピンチを空振り三振で切り抜けたドジャース黒田博樹は、右拳を握り締め、「ヨッシャー」と雄叫びを上げた。その声は、地上20m以上の高さにある球場5階の記者席にまで届いた。

 乾いたバットの音、観客のブーイング。米国のボールパークには、やはり自然な「球音」が似つかわしい。

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