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“シード権地獄”で生き残れるのか?
石川遼の米ツアー、不振の背景。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byGetty Images

posted2013/03/15 10:30

“シード権地獄”で生き残れるのか?石川遼の米ツアー、不振の背景。<Number Web> photograph by Getty Images

米国ツアーの大会でフロリダのコースを歩く石川遼。予選落ちや下位での苦しい戦いが続く中、光明を見出せるか。

アメリカでの6試合目にして現在の石川は……183位。

 さて、石川の現在のポジションはというと自身の6試合目、プエルトリコオープンを終えてフェデックスカップポイントは23、全体183位である(3月12日現在)。ちなみにこの時点での125位、ジェフ・マガートは84ポイント。出遅れといっていい。

 初戦から3試合は決勝ラウンド進出のラインにどれも遠く及ばず予選落ち。4試合目のノーザントラストオープンで初めて決勝ラウンドに進んだが、61位タイと振るわなかった。昨年2位のプエルトリコでは3日目に米ツアーで初めてとなるホールインワンを達成したものの、バーディ合戦が展開された最終日に痛恨のオーバーパー。39位タイに終わった。

「今年初めて獲得できたシード。2回連続で獲ることの方がもちろん難しい。1試合の積み重ねによるものだが、それも、まだまだだなと思う」

さらに上を目指すために、年明けから着手したスイング改造。

 望んだ成績を出せない理由のひとつとして、まず年明けから着手したスイング改造が思い当たる。

 これまで苦しんできた腰痛を緩和することを目的としつつも、より効率良く力を伝えられる体の動きも模索している。下半身のバタツキをより一層抑えながら、回転運動を続ける上半身を加速させてボールを飛ばす……といったところだ。

 しかしこの習得は、当然ながら一筋縄にいかない。昨年までに磨いてきた、状況に応じて多彩にボールを曲げながら攻めるスタイルをあえていったん“縮小”。「まずは中弾道のストレートボールを打てるように」と、ニュートラルな動きを固めている段階だ。それを毎週、試合を戦いながら構築することが難しい。

「どうしても緊張する場面で無意識に体が前の動きをしてしまうことが絶対にある。優勝争いをしているときに、どういう動きができるかが大事。無意識になったとき、求めている動きができるかどうか。そうでなければ定着とは言えない。そこまでは“時間”がかかる」

スイング改造を進めながら、シードを維持することは可能なのか。

 本格参戦1年目の石川にとって、シードを維持する戦いは時間との勝負ともいえる。

 現在のウィークポイントとして彼が認識するのが、新しいスイングで放つアイアンショットの精度。高い優先順位で取り組んでいる克服箇所だ。

 しかし、5戦目の「ザ・ホンダクラシック」で特に顕著だったが、スコアメークの要といえる勝負所でのパッティング、アプローチといったショートゲームにも精彩を欠くシーンが見られた。特にパットは「オフから練習できていない」と本人が言うほどのブレーキとなっている。

 シーズンは長いが、鍛錬にかけられる時間は無限ではない。

 将来を見据えた全体的なスキルの底上げを図る一方で、目先の1ポイント、1ドルをもぎ取りに行く、そんな調整も同時進行させなければならない。

 さらにいえば、シーズンを長期的に眺めながら、試合出場の戦略を練ることも重要になってくる。そしてそれは、年間シードを持つプレーヤーの“醍醐味”でもある。

【次ページ】 参加する大会を戦略的に選び、ポイントを稼ぐ必要も。

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