一安打で得点する緻密な野球が侍ジャパンの持ち味。

　また8回の同点に追いついたケースでもそうだった。

　阿部慎之助の適時打で1点差とし、なお1死一、二塁の場面。坂本勇人が遊撃を強襲する安打を放ったが、二塁走者の代走・本多雄一の本塁突入は微妙なタイミングだった。しかし、このときボールを拾った台湾の左翼手、ヨウ・ダイカン（陽岱鋼）の目の前で、一塁走者の糸井嘉男が間に合わない三塁に走って“囮”となり、本塁への送球を諦めさせている。

　積極的に走る、足を使った攻撃が、実は日本の劇的勝利の陰にあったキープレーだったのである。

　打てないと言われてきた侍打線。この日は13安打を放ったが、序盤はあと1本が出ないで残塁の山を築いた。それでもそこにあと一つスパイスが加われば、点は線につながって、9回の同点劇のように一安打でも得点に結びついていくようになるはずである。

　そのスパイスが……この日は足だったが、あるときはバントであり、またある場面ではエンドランや右打ちということになるわけだ。

　それこそがスモールベースボールであり、それこそが3連覇を目指す侍ジャパンの野球のはずである。