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フェド杯4強入りならず。
伊達の起用は正解だった?
~古傷悪化でも外せない“看板”~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byMannys Photography

posted2013/03/11 06:00

17年ぶりの準決勝進出をかけて戦った伊達だったが、「モスクワの奇跡」はならなかった。

17年ぶりの準決勝進出をかけて戦った伊達だったが、「モスクワの奇跡」はならなかった。

 2月に行なわれた国別対抗戦フェドカップ、ワールドグループ1回戦の日本対ロシア戦。日本は森田あゆみが2勝を挙げる活躍で通算2勝1敗とリード、世界4強入りに王手をかけてクルム伊達公子が登場した。

 伊達は初日の第1試合で右のアキレス腱を痛めていた。アリーナの床材の上にハードコートを敷いた特設コートで試合をこなすうちに古傷が悪化したのだ。伊達は村上武資監督に状態をありのままに伝えた。「(翌日の試合に出場しても)パフォーマンスは下がります」。それでも、村上監督は「できるならやってほしい」と応じ、当日朝の様子をみて最終判断を下すことにした。「やるべきか、やめるべきか」。伊達はエントリー変更の締め切り直前まで悩んだものの、最後は奮闘する森田の姿を見て腹をくくった。

 結果は1-6、1-6の完敗。最終試合のダブルスでも土居美咲/森田が敗れ、日本は2勝3敗で敗退した。

「本来のパフォーマンスの半分以下」の伊達と森田頼りだった。

「このチームは森田と伊達の2枚看板でやってきた」と村上監督は伊達起用に踏み切った理由を明かした。裏を返せば、ここで起用するだけの信頼感が控え選手にはなかったことになる。3番手、土居美咲の世界ランク84位は伊達の77位とほぼ同じだが、団体戦での経験値は天と地ほど違う。

 村上監督の脳裏には1996年、ドイツと戦ったフェド杯の残像もあった。「グラフに勝ったときも、(前日痛めた)左足を引きずりながら戦った」。そこで伊達が見せた勝負強さ、土俵際の開き直りを再び見せてくれると信じてコートに送り出したのだ。

「本来のパフォーマンスの半分以下だった」。試合後、伊達は淡々と語った。ブログには「私が戦うべきじゃなかった」とも書いている。体調を過信したわけではないだろう。故障の回復ぶり、監督からの期待、土居の両肩に掛かるであろうプレッシャー、それらをすべて天秤に載せたうえで下した決断であり、それが誤りだったというのだ。

 伊達で本当によかったのか。村上監督は試合後の会見では起用の正否には触れなかったが、時間が経った今、自身の采配に対する評価を聞いてみたい。いずれにしても、次の戦いに向けての強化は、手負いの伊達を使うしかなかったという事実を直視することから始まる。

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